
輸送用機械器具製造業は、最後に残った世界をリードできる日本を代表する巨大産業といっても間違いではないでしょう。
日本標準産業分類では「中分類 31:輸送用機械器具製造業」に位置し、自動車、鉄道車両、船舶、航空機、宇宙機器、産業用車両など、人や物を運搬する機械やその部品製造を行う産業を指し、製造業の中でも特に規模が大きく、国内外に広く影響を与える重要な産業です。
特に自動車産業は、世界市場でも高く評価され、日本車は低燃費や安全の代名詞になっています。
自動車産業だけでも、日本の製造業全体出荷額の約2割を占める規模を持ち、トヨタやホンダなど、世界的な自動車メーカーが多数存在するだけでなく、その系列として、デンソーや豊田合成などの部品メーカーが群雄割拠しています。
世界ではEV化が加速する中、ハイブリッド技術を中心に、全方位的な自動車開発ができる日本メーカーは、今後も世界販売を伸長していくと予想されています。
また、船舶や鉄道車両の分野でも日本の輸送用機械器具製造業は高い技術力を誇っており、輸出量も多くなっています。
輸送用機械器具製造業の特色

巨大な市場規模
輸送用機械器具製造業は、日本の製造業の中でも特に市場規模が大きい産業のひとつです。
経済産業省の工業統計調査によると、輸送用機械器具製造業の製造品出荷額は約75兆円を超え、製造業全体の約20%を占めています。
また、雇用面でも非常に大きな影響を持ち、自動車産業を中心に数百万人規模の雇用を創出しています。
特に地方の製造業を支える重要な産業であり、トヨタの愛知県、マツダの広島県、ホンダ発祥の地である静岡県などは輸送用機械器具製造業を基盤とした産業集積が進んでいます。
高い研究開発力
常に安全性や快適性が必要とされる輸送用機械器具製造業は、最先端の技術革新を求められる業界です。
特に自動車分野では、電動化(EV)、自動運転、コネクテッド技術の発展が急速に進んでおり、各社は莫大な研究開発費を投じています。
トヨタ自動車の研究開発費は年間1兆円を超える規模となっており、これは国内企業の中でもトップクラスの水準ですが、あまりに投資額が大きく、優勝劣敗が明確になりつつあるため、今後は合従連衡が起こる可能性があるでしょう。
航空機産業においても、軽量化技術や燃費性能の向上を目的とした新素材の開発が進んでいますが、日本企業は総じて劣勢が続いています。
また、宇宙産業では、JAXAと民間企業が連携し、小型衛星やロケットの開発が活発化しており、商業化の目処が立ってきました。
国際競争力
輸送用機械器具製造業は、グローバル展開に活路を見出してきた歴史からもわかる通り、日本の輸出産業の中心的な役割を果たしています。
自動車産業においては、日本メーカーが世界市場で高い競争力を持っており、特に北米、欧州、アジア市場でのシェアが大きく、トヨタ自動車、ホンダ、日産自動車の3社は、海外販売比率が70%を超えており、現地生産も積極的に行い、グローバル化を推し進めています。
一方、韓国や中国のメーカーだけでなく、ベトナムなどの新興国メーカーも勢いを持っていることから、今後は厳しい競争に巻き込まれていくと予想されています。
特にEV化の進展は、エンジン製造技術に優位性を持っていた国内メーカーにとっては逆風になるでしょう。
航空機産業では、三菱重工業や川崎重工業がボーイング社の部品供給を担うなど、国際的なサプライチェーンの一角を担っていますが、三菱重工業のMRJが頓挫するなど、独自の製造技術確立は難しく、まだまだ欧米との差は縮められていません。
産業分類における輸送用機械器具製造業

小分類~細分類
- 310 管理,補助的経済活動を行う事業所(31輸送用機械器具製造業)
- 3100 主として管理事務を行う本社等
- 3109 その他の管理,補助的経済活動を行う事業所
- 311 自動車・同附属品製造業
- 3111 自動車製造業(二輪自動車を含む)
- 3112 自動車車体・附随車製造業
- 3113 自動車部分品・附属品製造業
- 312 鉄道車両・同部分品製造業
- 3121 鉄道車両製造業
- 3122 鉄道車両用部分品製造業
- 313 船舶製造・修理業,舶用機関製造業
- 3131 船舶製造・修理業
- 3132 船体ブロック製造業
- 3133 舟艇製造・修理業
- 3134 舶用機関製造業
- 314 航空機・同附属品製造業
- 3141 航空機製造業
- 3142 航空機用原動機製造業
- 3149 その他の航空機部分品・補助装置製造業
- 315 産業用運搬車両・同部分品・附属品製造業
- 3151 フォークリフトトラック・同部分品・附属品製造業
- 3159 その他の産業用運搬車両・同部分品・附属品製造業
- 319 その他の輸送用機械器具製造業
- 3191 自転車・同部分品製造業
- 3199 他に分類されない輸送用機械器具製造業
輸送用機械器具製造業を代表する企業

トヨタ自動車
世界最大級の自動車メーカーであり、日本企業の地位が没落していく中、世界と伍していける日本を代表する企業です。
2023年の世界販売台数は1,050万台を超え、ハイブリッド車(HEV)にも力を入れています。
また、水素燃料電池車(FCEV)や実証都市の開発も進めており、持続可能なモビリティ社会の実現を目指しています。

トヨタ自動車株式会社
自動車等の製造・販売
ホンダ
四輪車、二輪車、航空機など幅広いモビリティ事業を展開するメーカーです。
二輪車では世界トップクラスのシェアを誇り、四輪ではF1のイメージが強く、小型ジェット機「HondaJet」も開発・販売しています。
また、自動運転技術やロボティクス分野でも先進的な取り組みを行っています。

本田技研工業株式会社
事業概要:輸送用機器製造 一般事業主行動計画は、以下の会社に適用 ・本田技研工業株式会社 ・株式会社本田技術研究所 ・株式会社ホンダアクセス ・株式会社ホンダ・レーシング ・学校法人ホンダ学園
日産自動車
電気自動車(EV)「リーフ」を世界に先駆けて量産化した企業であり、EV市場のリーダー的存在でした。
フランスのルノー、三菱自動車とアライアンスを組み、グローバルな生産・販売ネットワークを構築していますが、行く先に暗雲が立ち込めていそうです。

日産自動車株式会社
輸送用機器製造
三菱重工業
航空機、船舶、鉄道、宇宙機器など幅広い輸送用機械を手がける総合重工業メーカーです。
ボーイングの航空機部品を供給するほか、H-IIAロケットの開発・製造にも携わっています。

三菱重工業株式会社
一般機械器具及び輸送用機械器具の製造販売
川崎重工業
鉄道車両や航空機エンジン、船舶、産業用ロボットなど多様な事業を展開するメーカーです。
新幹線車両の製造でも有名であり、海外市場にも積極的に進出しています。

川崎重工業株式会社
輸送用機器の製造、販売
輸送用機械器具製造業の規模

国内市場規模
経済産業省の工業統計調査によれば、輸送用機械器具製造業の出荷額は約75兆円で、製造業全体の20%を占め、世界トップの生産規模を誇っています。
特に自動車産業は圧倒的な生産台数を維持しており、関連企業を含めると約500万人の雇用を支えています。
グローバル市場との比較
グローバルな視点で見ても、日本の輸送用機械器具製造業が大きな影響力を持っていることに異論はないでしょう。
自動車産業では、トヨタ自動車が世界販売台数トップの座を維持しており、ホンダや日産もグローバル市場で一定のシェアを確保し、さらにマツダやスバルなどの乗用車メーカーも根強い人気を持ち、日野やいすづなどのトラックメーカーも存在感を失っていません。
また、航空機産業においても、三菱重工業や川崎重工業が世界の航空機メーカーと取引を行い、鉄道車両の分野では、日立製作所や川崎重工業が欧米だけでなく、新興国にも海外向け車両を供給しています。
まとめ
日本を代表する産業は?との問に、「輸送用機械器具製造業」と回答する人が多いのではないでしょうか。
とりわけ自動車製造は、日本経済を支える重要な産業であり、唯一残った世界をリードできる業界かもしれせん。
もちろん、航空機、鉄道、船舶といった分野も健闘しており、世界市場でもプレゼンスを発揮しています。
自動車産業は世界トップクラスの競争力を維持しているものの、電動化や自動運転といった技術革新が進行中で、異業種からの参入も多く、今後も優位を保てる保証はありません。
また、航空機や鉄道産業も高い技術力を誇り、グローバル市場での競争を勝ち抜いていますが、新興国メーカーの追い上げも激しく、新たな戦略が求められる場面があるかもしれません。
今後、カーボンニュートラルの推進や次世代モビリティの開発が進む中、日本の輸送用機械器具製造業がどのように変革を遂げていくのか注目されます。
技術革新と持続可能な成長の両立が、輸送用機械器具製造業の未来を決定づける重要な要素となるでしょう。