企業研修とは
企業研修とは、企業が従業員のために行う教育プログラム全般と定義されています。
入社時の「新入社員研修」や管理職昇進タイミングでの「新任管理職研修」などが馴染み深いかもしれません。
先輩社員による社内研修、外部講師による集合研修、またコロナ禍以降はオンライン研修も普及してきました。
企業研修の目的
企業研修の目的は「人材開発」と「組織開発」が中心になります。
人材開発
人材開発とは、スキルアップや資格取得支援など、企業が個人の成長を後押しする取り組みです。
企業の基礎である「人」の成長こそが会社全体の成長の原動力になるため、企業は人に投資する必要があるのです。
具体的には、プレゼンテーションスキル、コミュニケーションスキル、リーダーシップスキル、また新しい技術、業界の規制および法改正などの専門知識の習得機会を与えます。
組織開発
組織開発とは、組織の生産性向上を目的にした取り組みです。
経営層や管理職のマネジメント力が向上すれば、従業員のモチベーションはアップし、離職率の低下につながります。
そして競争優位を確保し、ビジネスの長期的発展が実現できるのです。
最近では従業員が相互理解を深め、コミュニケーションや協調性を高めるためのチームビルディング研修が人気です。
これらを通じ、企業は従業員の能力を最大限に引き出すことができ、効率的な組織運営を行うことができるようになるのです。
企業研修の手法
企業研修で用いられる手法を大別すれば「OJT(On the Job Training)研修」と「OFFJT(Off the Job Training)研修」になります。
OJT研修は通常業務の習得が目的で、OFFJT研修は役職や職種ごとに必要なスキル習得を目的にしています。
多くの企業では、OJT研修とOFFJT研修会社を組み合わせて研修プログラムを構成しています。
OJT研修
OJT研修とは、第一次世界大戦中のアメリカで考案されたやり方で、職場の上司や先輩が、部下や後輩に対して、実際の仕事を通じて指導し、知識、技術などを身に付けさせる教育方法のことです。
わかりやすく言えば「社内研修」です。
研修終了時には単独で仕事を担当できるレベルを目指します。
職場内で実務を経験するため、周囲とのコミュニケーションが円滑になるメリットもあります。
一方、上司や先輩は、実務の中で部下や後輩の性格や能力を把握できるメリットがありますが、OJTの指導により、部署内の人的リソースが一時的に減少してしまうデメリットもあります。
OFFJT研修
OFFJT研修は職業外研修で、言い換えれば「社外研修」です。
一般的には外部機関に依頼する集合研修が中心で、階層と職種によって必要となる知識・技能を学ぶメニューが用意されています。
OJT研修とは違い、通常業務外で十分な時間を取るため、スキル習得に集中できるメリットがある上に、講師も各分野の専門家なので、より深い知識が習得できます。
ただし、研修内容を忘れてしまうことが多いため、定期的にフォローアップを行うことが重要です。
時間やコストの制約から、オンラインでの実施も増えてきました。
階層別の研修内容
企業研修は階層別の実施が効率的です。
具体的には「管理職」「中堅社員」「新入社員」のカテゴリで実施されるケースが多いでしょう。
管理職研修
チームビルディング研修
近年、注目されているのがチームビルディング研修です。
コミュニケーション能力や従業員の心理的安全性を高めるためのノウハウを学び、組織内の信頼感を高めながら、メンバーそれぞれが力を発揮できる環境の作り方を学びます。
上意下達ではなく、従業員の意欲を引き出す現代流のリーダーを作る内容です。
部下育成研修
管理職の主な役割は部下の指導育成です。
正しいリーダーシップで部下のモチベーションをアップさせるためには、適切なコミュニケーションの取り方を知る必要があります。
具体的にはメンタリングやフィードバックの方法など、対人関係において不可欠な内容を学びます。
ハラスメント研修
近年はセクハラ・パワハラなど、様々なハラスメントが問題になっています。
これまでは「指導」だと考えられてきたコミュニケーションがハラスメント認定されてしまうなど、その範囲は益々広がっており、企業も無視できない問題になってきています。
ハラスメントの主因は「意識の違い」です。
年配社員と新入社員では、ハラスメントの定義が違うので、このギャップを研修で埋める必要があるのです。
中堅社員研修
リーダーシップ研修
リーダーシップ研修は、今後組織を担っていく世代を育てるための教育プログラムです。
リーダーシップを発揮する上で必要な考え方や技能を習得し、将来役職につくときには確実な成果が出せるよう準備させます。
また、リーダーの必要性を理解することができるため、現リーダーのサポート役を育てる効果もあります。
コミュニケーション研修
組織内での円滑なコミュニケーションを実現させるためのプログラムです。
業務効率化には中堅社員のコミュニケーションスキル向上が必要です。
情報の共有化が実現できれば、人間関係などの数々のトラブルが防止でき、結果的に業績が向上します。
新入社員向けの研修
ビジネスマナー研修
社会人としての常識を植え付けるプログラムです。
社内外を問わず良好な人間関係構築させるための常識を教えます。
身だしなみや言葉遣いだけでなく、電話対応や名刺交換の方法、報連相やメールの書き方など対象になります。
OAスキル研修
スマホ世代はPCの使用に慣れていません。
WordやExcelなど、業務上使用するアプリケーションの基本操作を身に付けさせます。
また、社内インフラや対外的なコミュニケーションにも使用するGoogleの各種アプリケーションもある程度使用できるようにしておくといいでしょう。
企業研修の注意点
研修目標の設定
研修にもPDACが必要です。
「習得すべきスキル」「解決すべき課題」など、研修後の理想像を明確にしておかなければ、効果計測ができません。
また、受講者も何を目的に研修を受ければいいのかわからず理解が深まらないので、必ず研修の着地点を設定しておきます。
振り返りの機会を設ける
研修の一定期間後に効果測定を行います。
研修で得た知識やスキルが活かされているのかを調べます。
また、復習の機会を設けることも重要です。
座学は時間経過とともに忘れてしまう傾向にあるので、定期的に再学習の機会を作り、深く理解させるようにします。
これにより、本当の効果が得られるようになります。
研修会社の選び方
社外研修の成果は、研修会社で決まるといっても過言ではありませんが、研修会社選択のポイントを理解していないケースがほとんどです。
研修実績
研修とはノウハウの塊です。
つまり、長い社歴に裏打ちされた多くの実績が信頼の証になるのです。
研修会社を選ぶ際は、なにより実績豊富な会社を選びます。
会社のホームページに研修内容の説明があるので、開催件数などを確認します。
同時に顧客の属性もチェックします。
大手企業に採用されている研修会社であれば、一定のクオリティは確保されていると考えていいでしょう。
また、実績豊富な研修会社は総じて講師のクオリティが高い傾向にあります。
いい研修会社は待遇もいいので、レベルの高い講師が集まるのです。
講師の一覧も確認してみましょう。
プログラム内容
希望するプログラムを提供している研修会社を選びます。
大手研修会社であれば、多くの分野の研修を提供していますが、中には特化型の研修会社も存在しています。
また類似した研修名であっても、研修会社によっては内容が異なる場合があります。
求めるプログラムであるかを仔細に確認する必要があります。
サポート体制
いい研修会社はサポート体制が充実しています。
特に近年はオンライン研修のトラブルが増えています。
「ツールの不具合」「通信の切断」などさまざまな問題が発生しますが、万全のサポート体制が敷かれていれば安心できます。
また、アフターフォローも重要です。
「研修を実施して終わり」ではなく、研修後の定着率調査など、研修後のサポートもあれば、研修効果を実感できるでしょう。