鉄鋼業の特色や世界的粗鋼生産企業|鉄は国家なり

かつて「産業の米」とも呼ばれた鉄鋼業は、鉄鉱石やスクラップを原材料として、鉄や鋼を生産する産業です。

自動車、建築、造船、家電製品など、多くの産業に材料を供給しており、日本経済の発展に欠かせない存在になっています。

まさに「鉄は国家なり」です。

鉄鋼業は、主に「高炉プロセス」と「電炉プロセス」のふたつに分けられますが、高炉プロセスは鉄鉱石を主原料にした大規模生産を可能とし、一方の電炉プロセスは鉄スクラップを利用したリサイクル性の高い生産を利点としています。

明治期の八幡製鉄所から連綿と続く歴史を持つ近代の鉄鋼業ですが、現在は環境負荷低減や効率性を追求し、社会的要請に応じた変化を遂げています。

鉄鋼業の特色

巨大な資本と設備投資

鉄鋼業には、高炉や電炉などの大規模な設備が必要であり、巨額の初期投資を要します。

世界的企業同士の買収が数兆円になることからも、鉄鋼業の規模の大きさが理解できるでしょう。

とりわけ高炉建設はまさに国家的事業といってもよく、これにより規模の経済を働かせ、生産コストを削減し、他国との競争に生き残っていくのです。

資源依存型産業

鉄鉱石や石炭などの天然資源を多量に使用するため、資源供給国との経済的な結びつきが強い産業です。

言い方を変えると、資源供給国に未来を左右されてしまう運命にあるため、資源に乏しい我が国は厳しい経営環境に置かれているといえます。

また、原材料の調達コストや輸送効率が企業の競争力を大きく左右します。

特に日本の鉄鋼業は、資源を輸入に頼るため、調達ネットワークと技術力でコストを抑えなければ、世界と伍していけません。

鉄鉱石は主にオーストラリアやブラジルなどで採掘され、輸入されています。

大規模な生産設備と技術革新

大規模な高炉や電炉を使用し、大量生産が可能な生産体制を持っていますが、近年は環境負荷を抑えるための技術革新が注目されています。

高炉からの二酸化炭素排出を削減する「水素還元製鉄」やリサイクル率を高める電炉技術の開発が進んでいます。

環境規制への対応

生産時のエネルギー消費量が膨大になるため、二酸化炭素排出量削減などの環境規制への対応が不可避の課題になっています。

特に高炉生産では、石炭や天然ガスの消費が自ずと増えるので、CO2排出削減が重要な課題になります。

各国での脱炭素化政策が進む中、鉄鋼業界ではエネルギー効率化技術の導入や再生可能エネルギーの利用拡大が進められています。

高度なサプライチェーン

鉄鋼業は建設業、自動車産業、造船業など、多くの産業と密接に連携しているため、生産の遅れなどが致命傷になります。

需要予測や品質管理の精度向上用のデータ活用やサプライチェーンの最適化が求められています。

産業分類における鉄鋼業

日本標準産業分類では、鉄鋼業は「中分類22」として定義されています。

小分類と細分類

  • 220  管理,補助的経済活動を行う事業所(22鉄鋼業)
    • 2200  主として管理事務を行う本社等
    • 2209  その他の管理,補助的経済活動を行う事業所
  • 221  製鉄業
    • 2211  高炉による製鉄業
    • 2212  高炉によらない製鉄業
    • 2213  フェロアロイ製造業
  • 222  製鋼・製鋼圧延業
    • 2221  製鋼・製鋼圧延業
  • 223  製鋼を行わない鋼材製造業(表面処理鋼材を除く)
    • 2231  熱間圧延業(鋼管,伸鉄を除く)
    • 2232  冷間圧延業(鋼管,伸鉄を除く)
    • 2233  冷間ロール成型形鋼製造業
    • 2234  鋼管製造業
    • 2235  伸鉄業
    • 2236  磨棒鋼製造業
    • 2237  引抜鋼管製造業
    • 2238  伸線業
    • 2239  その他の製鋼を行わない鋼材製造業(表面処理鋼材を除く)
  • 224  表面処理鋼材製造業
    • 2241  亜鉛鉄板製造業
    • 2249  その他の表面処理鋼材製造業
  • 225  鉄素形材製造業
    • 2251  銑鉄鋳物製造業(鋳鉄管,可鍛鋳鉄を除く)
    • 2252  可鍛鋳鉄製造業
    • 2253  鋳鋼製造業
    • 2254  鍛工品製造業
    • 2255  鍛鋼製造業
  • 229  その他の鉄鋼業
    • 2291  鉄鋼シャースリット業
    • 2292  鉄スクラップ加工処理業
    • 2293  鋳鉄管製造業
    • 2299  他に分類されない鉄鋼業

鉄鋼業を代表する企業

日本製鉄株式会社

日本で初めて鉄を大量生産した八幡製鉄所の流れを汲む国内最大の鉄鋼メーカーで、世界的にも有数の規模を誇る有力企業です。

海外展開にも積極的で、アジアや欧米に多くの拠点を持ち、グローバルな競争力を維持しながら、革新的な製造プロセスの開発に取り組み、環境対応型の鉄鋼製品や高機能鋼材の開発を進めています。

日本製鉄株式会社

鉄鋼業

JFEスチール株式会社

川崎製鉄と日本鋼管の合併で誕生したJFEスチールは、国内第2位の鉄鋼メーカーです。

自動車用鋼材やエネルギー関連鋼材に強みを持ち、低炭素社会の実現に向けた技術開発にも注力しています。

JFEスチール株式会社

鋼管製造業

株式会社神戸製鋼所

ラグビーでもお馴染みの同社は、鉄鋼製品に加え、アルミニウムやチタンなどの非鉄金属分野でも大きなポジションを獲得しています。

航空宇宙産業や自動車産業向けの高付加価値製品に注力しており、独自の製造技術で厳しい競争を勝ち抜いてきました。

株式会社神戸製鋼所

鉄鋼・アルミ・銅などの素材およびそれらを接合するための技術である溶接を中心とした「素材系事業」、圧縮機などの産業機械およびショベル・クレーンなどの建設機械を中心とした「機械系事業」、火力発電所による電力卸事業(IPP)を中心とした「電力事業」をビジネスの三本柱としている。

鉄鋼業の規模

国内規模

日本の鉄鋼業は、世界でもトップクラスの生産能力を誇ります。

国内粗鋼生産量は約8900万トンであり、中国、インドに次ぐ、世界第3位の規模を維持しています。

また、国内生産の約3割が輸出に向けられており、特にアジア市場向けの需要に応じています。

世界規模

世界全体の鉄鋼生産量は年間20億トンを超え、中国がその半数以上を占めているため、どの国も量では太刀打ちできません。

各国が独自の競争戦略を展開していますが、日本企業は高度な技術による高機能鋼材の生産に活路のひとつを見出しています。

国際市場では、エネルギー価格や貿易政策が鉄鋼価格に与えるため、不安定要素が大きく、競争が激化する傾向にあります。

鉄鋼業の未来と課題

鉄鋼業は、昔も今も経済成長の土台となる重要な産業である点は変わりませんが、昨今は以下の課題にも直面しています。

新興国の台頭

懸念のひとつは新興国、とりわけ中国企業の動向ででしょう。

中国は経済発展に伴い、鉄鋼生産量を急拡大し、安価での輸出を可能にしたため、世界的に鉄鋼製品の価格が低下しました。

‌また、日系メーカーのドル箱だった高付加価値製品も中国メーカーにキャッチアップされつつあります。

日系メーカーは技術開発やM&Aによる規模拡大で対抗しています。

環境負荷の軽減

生産時における二酸化炭素排出削減のための新技術の開発が急務です。エコプロセス、水素還元技術、CCUS(Carbon Capture, Utilization, and Storage)技術、エコプロダクト、再生可能エネルギーの活用などを中心に業界全体が前向きな取り組みを推進しています。

資源の確保

中国やインドが粗鋼生産を拡大しているため、鉄鉱石や石炭の供給をめぐる国際競争が激化しています。

安定的な原料調達に向けての対策が不可欠になるでしょう。

需要構造の変化

電動車(EV)の普及や都市化の進展による需要の変動、また景気による需要変動にも柔軟に対応する必要があるため、正しい見通しが求められます。

まとめ

近代化が進んだ明治以降、鉄鋼業は多くの産業の基盤的な役割を果たし、国家そのものを支える重要な産業として成長してきました。

戦後復興を支えたのも鉄鋼業の貢献が大きかったでしょう。

巨大な設備投資、大量のエネルギー消費、産業集積などが特徴で、日本製鉄やJFEスチールといった国内企業だけでなく、韓国のPOSCOやルクセンブルクのアルセロール・ミタルなどの海外企業もグローバル市場において大きな影響力を持っています。

また、中国企業の躍進が目覚ましく、世界市場を席巻しそうな勢いですが、中国政府が余剰生産能力の減少に動き、再編も進んでいるため、動向に注視が必要です。

近年では、カーボンニュートラルに向けた取り組みが業界全体で進められており、これが鉄鋼業の技術革新のポイントになり、未来を占う鍵となるでしょう。

日本の鉄鋼業は高度な技術と高品質な製品で国際競争力を維持しながら、地球環境への責任を果たしていく姿勢が求められていますが、新興国との競争はますます激化しそうな情勢です。