SaaSツールとは
SaaSとは「Software as a Service」の略称で、インターネットを介して利用できるソフトウェアサービスを指します。
読み方は一般的に「サース」ですが、稀に「サーズ」とも言われます。
PC普及以降、ソフトウェアはCD-ROMなどパッケージとしてライセンス販売されることが一般化していました。
しかし、SaaSに登場により状況は一変します。
クラウドサービス事業者がインターネット上にソフトウェアを開放し、ユーザーがアクセスすることによって利用できるようパラダイムシフトが起こったのです。
現在、SaaSはソフトウェアビジネスにおいて最もポピュラーな形態に成長しています。
具体的なジャンルとして、オンラインストレージ、CRM、HR管理などがあり、利用契約直後からすぐに使用でき、費用は利用分を月額または年額などで支払います。
無料版を提供するサービスもあるため、簡単にお試し利用できる利点もあります。
同義語として「ASP(Application Service Provider)」がありますが、一般的には、SaaSはソフトウェアを表すのに対して、ASPはサービス提供事業者やビジネスモデルを指す場合が多いといえます。
インターネット経由でどこからでもアクセス可能
SaaSの特徴のひとつは、インターネット経由で、いつでも、どこからでもアクセスできることです。
従来のように、特定パソコンに対してライセンスが与えられるわけではなく、契約したアカウントに対してソフトウェアの利用が認められるため、社外からでもソフトウェアを利用できるのです。
PCやスマートフォンなど異なるデバイスでもアクセスが可能になります。
複数ユーザーの同時アクセス
ドキュメント編集機能やストレージ機能があるSaaSでは、複数ユーザーが同時にファイルの閲覧や編集作業ができる点も特徴でしょう。
編集やアップロードしたファイルはクラウド上に保存されるため、常に最新状態のファイルを複数のユーザーで共有できるのです。
リモートワークを可能にしたのは、この機能のお陰ともいえます。
SaaSサービスの種類
一般的なSaaSサービスは、以下のような種類があります。
- 勤怠管理システム
- 電子契約システム
- オンラインストレージ
- PBX
- グループウェア
- クラウド請求書
- Web会議
- ファイル転送
- 経費精算システム
- チャットボット
- 採用管理システム
- 従業員満足度調査ツール
- SFA
- RPAツール
- CTIシステム
- Web接客ツール
- 人事評価システム
- 人事評価システム
- 在庫管理システム
- BIツール
- ウイルス対策ソフト
- 人事システム
- 会計ソフト
- 給与計算システム
- ワークフローシステム
- 労務管理システム
- メール配信システム
- IP電話
- 文書管理システム
- MAツール
- プロジェクト管理ツール
- 決済代行
- ビジネスチャットツール
- eラーニングシステム
- 人事評価システム
- 名刺管理ソフト
- タレントマネジメント
- CRM
- ナレッジマネジメントツール
SaaSのメリットとデメリット
SaaSのメリット
迅速な導入
SaaSはインターネット経由で利用できるため、導入が非常に迅速です。UIも優れており、直感的に操作できるサービスが多いのも特徴です。契約直後からすぐに利用できるため、時間的ロスが最小限になります。
コスト
SaaSのメリットのひとつは初期費用です。SaaSサービスの多くは、導入時のコストが抑えられる傾向にあります。従来の買い切り型の製品は、購入後に不要になればそれまでで、返品や返金制度はありませんでした。しかし、SaaSは不要になった時点で、契約を終了すればいいだけ。使った期間の使った分だけを支払えばいいので、無駄が省けるのです。
手間
買い切り型の製品は、インストールやアップデートによるバージョンの管理などは、ユーザー自身で対応する必要がありました。大きな組織の場合、そのためにシステム要員を用意するなど、隠れたコストも発生していました。しかし、SaaSは、サービス提供事業者がバグの修正や更新などの設定を担当してくれるので、バージョンアップなどの面倒な手間は一切かかりません。ユーザーには、常に最新の状態が提供され、いつでも快適にサービスが利用できるのです。
スケーラビリティ
SaaSはクラウドベースなので、リソースを必要に応じて自由に増減できます。スケーラビリティに優れており、無駄な経営資源を保有する必要がありません。
SaaSのデメリット
セキュリティ
SaaSは、インターネットを経由して利用するため、どうしてもセキュリティの不安がつきまといます。無料WiFiなど、セキュリティに問題のあるネット環境を利用するケースでは、不正アクセスの懸念があるので、自社で対策を強化しておくことが不可欠になります。
メンテナンス
サービス事業者によるメンテナンスの際にはサービスが強制的に停止され、一切の操作ができなくなります。また、サーバーの予期しないトラブルでサービス停止になれば、業務が完全にストップしてしまいます。
自由度
SaaSはアップデートによる機能の改廃があり、それがネガティブに作用するリスクがあります。SaaSは、サービス事業者が設計を行うので、必ずしもニーズに合わせた機能が追加されるとは限らないのです。以前の仕様の方がよかったのに・・・というケースも発生するかもしれません。
SaaS導入のチェックポイント
SaaS導入前のチェックポイントを紹介します。
セキュリティ
クラウドサービスはその構造から、セキュリティレベルに懸念があります。
物理的なサーバーを社内に設置していないため、どうしてもセキュリティの信頼性が低下するのです。
とはいえ、現在のクラウド事業者は例外なく厳重なセキュリティ対策に取り組んでおり、それほど大きな懸念ではなくなりつつあります。
ポイントは自社のセキュリティポリシーとのマッチングでしょう。
業務によって独自のセキュリティポリシーを設定している場合、自社のセキュリティポリシーに合致したSaaSを選ぶことが必須になります。
また、災害対応として、データセンターの所在や拠点数、バックアップ体制も判断基準にします。
クラウド事業者はリスクヘッジの観点からデータセンター所在などは公にしていませんが、災害対応の説明はしてくれるはずです。
サービスの将来性
SaaS市場は飽和状態になりつつあり、ジャンルによっては既にレッドオーシャン化しています。
既存サービスのユーザーをSaaSに移行させようとする大手企業も多く、一方で成長著しい新興企業の参入も増えているため、シェア争いは激化の一途を辿っています。
SaaS選択の際は、サービス事業者の成長戦略が重要なポイントになるでしょう。
具体的には、経済的成長、技術革新、利用拡大に備えた投資有無などが基準になります。
くれぐれも競争に敗れ、サービス休止に追い込まれるようなサービス事業者を選択しないよう、十分な精査が必要です。
SaaS導入に関する注意点
SaaSを導入する際には、ある程度の準備が不可欠です。
SaaS側ではなく、導入する企業側の問題に起因し、導入が失敗してしまうケースは少なくありません。
業務との親和性
クラウドサービスは基本的にカスタマイズが困難です。
導入後に自社業務とSaaSとのアンマッチを実感しても時すでに遅しなのです。
そのため、業務との親和性はSaaSの比較検討段階で重要視すべき要素となります。
サービス事業者の説明や比較表、仕様書だけでは実態が見えない場合があるので、ツールの性能を念入りに精査します。
可能であれば、導入前のトライアル運用を試しましょう。
価格の精査
クラウドは確かに低コストですが、選択を誤ると期待していたほどコストダウンが実現できなくなります。
事前に現業およびそれに関連する作業を定量化し、SaaS化した場合とのコスト計算をしなければいけません。
SaaS が安いのは、あくまで適切なサービス選択と正しいコスト計算をしていた場合だけです。
導入目的を明確にする
SaaS導入の失敗事例の特徴は「導入目的の明確化」にあります。
「ランニングコストが削減できそう」「他社も導入しているから」「業務効率化できそう」など、曖昧な導入理由では、SaaSの有効活用は実現できないでしょう。
「SaaSで何がしたいのか?」「どんな結果がほしいのか」「描きたい未来予想図」を明確にしましょう。
目的が明確になれば、自ずとSaaSに求める機能が見えてきます。
自社のニーズを深掘りすることは、ベストなSaaS選択には不可欠なのです。
また、正しい要件定義により、不必要な機能の削減やコストの肥大化を回避できます。
導入目的の明確化は、SaaS選びに欠かせない重要なプロセスです。
どのSaaSを導入するかを検討するよりも、まずは業務課題に真摯に向き合い、目的の明確化に取り組むべきなのです。