
小売業は、誰にとっても最も身近な産業のひとつでしょう。
出勤や通学中に立ち寄るコンビニ、ランチにお弁当を買うスーパーなどは、毎日のように利用するでしょうし、ドラッグストアや家電量販店なども頻繁に訪れるかもしれません。
服を買うための百貨店や専門店、日常の足として使っている車にガソリンを入れるスタンドも小売業に分類されます。
日々の購買行動に密接に関わり、商品やサービスを消費者に直接提供する役割を担っているのが、小売業なのです。
一方で同業内での競争が激しい上に、ネット通販の登場でより価格にシビアな顧客が増え、利益を削りながら涙ぐましい努力を強いられる厳しい業界でもあります。
小売業の特色

小売業の特色は「最終消費者との直接的な接点を持つ」という点でしょう。
毎日、買い物をするスーパーやコンビニはすべて小売業で、一般的には最も接する機会が多い業界だと思われます。
変化する消費者ニーズをいち早くキャッチするアンテナの高さ、そして、最適な商品を適正価格で提供する柔軟性が求められます。
同業間での競争は激しく、商品選定、価格設定、販売促進、サービスの質、店舗の立地条件、オンライン販売の対応力など、多岐にわたる知見がなければ勝ち残れない弱肉強食の世界でもあります。
また、多様性も特徴で、小規模な個人商店から、全国規模で展開するチェーン店、さらにはグローバル企業まで、様々な規模と業態が併存し、棲み分けがされています。
近年ではEC(電子商取引)を通じた販売も急速に発展しており、消費者との接点は複雑化しています。
地方では、大手スーパーマーケットやホームセンターが唯一の生活インフラとして機能している例も多く、小売業が地域社会に果たす役割の大きさと貢献度が際立っています。
産業分類における小売業

日本標準産業分類において、小売業は「大分類 I 卸売業,小売業」に位置づけられています。
小売業は、製造業や卸売業と密接に関連しながらも、エンドユーザーへの商品提供の役割を果たす点で区別されています。
具体的には以下のような分類ですが、多種多様な商品カテゴリーや販売形態を網羅しています。
さらに、インターネット販売を含むEC事業も小売業とされ、近年この分野の成長が著しく、多くの企業が参入してきています。
中分類 56 各種商品小売業
- 560 管理,補助的経済活動を行う事業所(56各種商品小売業)
- 5600 主として管理事務を行う本社等
- 5608 自家用倉庫
- 5609 その他の管理,補助的経済活動を行う事業所
- 561 百貨店,総合スーパー
- 5611 百貨店,総合スーパー
- 569 その他の各種商品小売業(従業者が常時50人未満のもの)
- 5699 その他の各種商品小売業(従業者が常時50人未満のもの)
中分類 57 織物・衣服・身の回り品小売業
- 570 管理,補助的経済活動を行う事業所(57織物・衣服・身の回り品小売業)
- 5700 主として管理事務を行う本社等
- 5708 自家用倉庫
- 5709 その他の管理,補助的経済活動を行う事業所
- 571 呉服・服地・寝具小売業
- 5711 呉服・服地小売業
- 5712 寝具小売業
- 572 男子服小売業
- 5721 男子服小売業
- 573 婦人・子供服小売業
- 5731 婦人服小売業
- 5732 子供服小売業
- 574 靴・履物小売業
- 5741 靴小売業
- 5742 履物小売業(靴を除く)
- 579 その他の織物・衣服・身の回り品小売業
- 5791 かばん・袋物小売業
- 5792 下着類小売業
- 5793 洋品雑貨・小間物小売業
- 5799 他に分類されない織物・衣服・身の回り品小売業
中分類 58 飲食料品小売業
- 580 管理,補助的経済活動を行う事業所(58飲食料品小売業)
- 5800 主として管理事務を行う本社等
- 5808 自家用倉庫
- 5809 その他の管理,補助的経済活動を行う事業所
- 581 各種食料品小売業
- 5811 各種食料品小売業
- 582 野菜・果実小売業
- 5821 野菜小売業
- 5822 果実小売業
- 583 食肉小売業
- 5831 食肉小売業(卵,鳥肉を除く)
- 5832 卵・鳥肉小売業
- 584 鮮魚小売業
- 5841 鮮魚小売業
- 585 酒小売業
- 5851 酒小売業
- 586 菓子・パン小売業
- 5861 菓子小売業(製造小売)
- 5862 菓子小売業(製造小売でないもの)
- 5863 パン小売業(製造小売)
- 5864 パン小売業(製造小売でないもの)
- 589 その他の飲食料品小売業
- 5891 コンビニエンスストア(飲食料品を中心とするものに限る)
- 5892 牛乳小売業
- 5893 飲料小売業(別掲を除く)
- 5894 茶類小売業
- 5895 料理品小売業
- 5896 米穀類小売業
- 5897 豆腐・かまぼこ等加工食品小売業
- 5898 乾物小売業
- 5899 他に分類されない飲食料品小売業
中分類 59 機械器具小売業
- 590 管理,補助的経済活動を行う事業所(59機械器具小売業)
- 5900 主として管理事務を行う本社等
- 5908 自家用倉庫
- 5909 その他の管理,補助的経済活動を行う事業所
- 591 自動車小売業
- 5911 自動車(新車)小売業
- 5912 中古自動車小売業
- 5913 自動車部分品・附属品小売業
- 5914 二輪自動車小売業(原動機付自転車を含む)
- 592 自転車小売業
- 5921 自転車小売業
- 593 機械器具小売業(自動車,自転車を除く)
- 5931 電気機械器具小売業(中古品を除く)
- 5932 電気事務機械器具小売業(中古品を除く)
- 5933 中古電気製品小売業
- 5939 その他の機械器具小売業
中分類 60 その他の小売業
- 600 管理,補助的経済活動を行う事業所(60その他の小売業)
- 6000 主として管理事務を行う本社等
- 6008 自家用倉庫
- 6009 その他の管理,補助的経済活動を行う事業所
- 601 家具・建具・畳小売業
- 6011 家具小売業
- 6012 建具小売業
- 6013 畳小売業
- 6014 宗教用具小売業
- 602 じゅう器小売業
- 6021 金物小売業
- 6022 荒物小売業
- 6023 陶磁器・ガラス器小売業
- 6029 他に分類されないじゅう器小売業
- 603 医薬品・化粧品小売業
- 6031 ドラッグストア
- 6032 医薬品小売業(調剤薬局を除く)
- 6033 調剤薬局
- 6034 化粧品小売業
- 604 農耕用品小売業
- 6041 農業用機械器具小売業
- 6042 苗・種子小売業
- 6043 肥料・飼料小売業
- 605 燃料小売業
- 6051 ガソリンスタンド
- 6052 燃料小売業(ガソリンスタンドを除く)
- 606 書籍・文房具小売業
- 6061 書籍・雑誌小売業(古本を除く)
- 6062 古本小売業
- 6063 新聞小売業
- 6064 紙・文房具小売業
- 607 スポーツ用品・がん具・娯楽用品・楽器小売業
- 6071 スポーツ用品小売業
- 6072 がん具・娯楽用品小売業
- 6073 楽器小売業
- 608 写真機・時計・眼鏡小売業
- 6081 写真機・写真材料小売業
- 6082 時計・眼鏡・光学機械小売業
- 609 他に分類されない小売業
- 6091 ホームセンター
- 6092 たばこ・喫煙具専門小売業
- 6093 花・植木小売業
- 6094 建築材料小売業
- 6095 ジュエリー製品小売業
- 6096 ペット・ペット用品小売業
- 6097 骨とう品小売業
- 6098 中古品小売業(骨とう品を除く)
- 6099 他に分類されないその他の小売業
中分類 61 無店舗小売業
- 610 管理,補助的経済活動を行う事業所(61無店舗小売業)
- 6100 主として管理事務を行う本社等
- 6108 自家用倉庫
- 6109 その他の管理,補助的経済活動を行う事業所
- 611 通信販売・訪問販売小売業
- 6111 無店舗小売業(各種商品小売)
- 6112 無店舗小売業(織物・衣服・身の回り品小売)
- 6113 無店舗小売業(飲食料品小売)
- 6114 無店舗小売業(機械器具小売)
- 6119 無店舗小売業(その他の小売)
- 612 自動販売機による小売業
- 6121 自動販売機による小売業
- 619 その他の無店舗小売業
- 6199 その他の無店舗小売業
小売業の規模

小売業は、消費者に直接商品を提供する経済活動の最終段階を担う重要な産業です。
震災や悪天候があれば、小売店では欠品が相次ぎ、消費者がパニック状態に陥ることも珍しくありません。
ここからも小売業の重要性が理解できるでしょう。
その規模は、日本国内においても非常に大きく、多くの人々の雇用や生活基盤を支え、地域社会にも貢献しています。
小売業の市場規模
年間商品販売額
日本の小売業全体の年間商品販売額は約140兆円です。
店舗数
個人商店から大規模チェーン店までの多様な形態を含み、小売業の店舗数は全国で約100万店舗に達します。
従業者数
小売業で働く人々の数は約800万人で、これは全就業人口のおよそ10%を占めますが、多くはパート・アルバイトで、給与自体はあまり多くありません。
業態ごとの規模
多様な業態で構成されており、それぞれに異なる市場規模と特徴があります。
総合スーパー(GMS)
年間売上高は約10兆円で、食品、衣料品、住居関連など、幅広い商品を取り扱い、都市部から郊外まで幅広く店舗展開しています。
コンビニエンスストア
高頻度・少量購入の消費者ニーズに対応し、飲食品や日用品を中心に24時間営業を行う業態が支持され、売上高は約12兆円と巨大です。セブンイレブン、ローソン、ファミリーマートが3強に集約されつつありますが、地方で存在感を持っているコンビニも存在しています。
EC(電子商取引)
インターネットを活用したオンライン小売業として近年最も成長が著しい分野で、市場規模は約25兆円とされています。
小売業の規模に影響する要因
人口構造の変化
高齢者マーケットを狙った商品やサービスが拡充されています。店舗まで出向けない移動困難な消費者を対象にした宅配サービスも拡大しています。過疎地の買い物難民などへの対策が急務でしょう。
技術革新
AI、IoT、ビッグデータなどの技術革新が効率性と利便性を向上させ、オンラインとオフラインを融合した「オムニチャネル戦略」として結実している事例が見られます。また、ドローンや自律走行型配送ロボットなどの活用が少子高齢社会の切り札になると期待されています。
小売業の未来展望
EC市場の拡大
日本のEC化率(小売業全体に占めるECの割合)は約10%ですが、今後はトラックの自動運転やロボットによる配送が実現できれば、さらなる市場拡大が予想され、特に食品や日用品の分野での成長が期待されます。
地域密着型店舗の再評価
人口減少が進む地方では、大手小売業者が地域密着型の小規模店舗を展開し、地元住民の生活インフラとして機能する動きが広がっています。
小売業を代表する企業

大手を中心に、ポイントで消費者を囲い込み、市場を牽引する代表的な企業の存在が目立ちます。
それぞれ独自のビジネスモデルや戦略を展開し、消費者から多くの支持を集めています。
代表的な小売業企業を詳しく解説し、各企業の特色、戦略、競争力の源泉について解説します。
株式会社セブン&アイ・ホールディングス
コンビニエンスストアを開発し、業界を牽引する小売業界を代表する企業です。
国内店舗数は約21,000店舗に達し、さらに海外を含めると50,000店舗以上を展開しています。
「セブンプレミアム」などの人気プライベートブランド(PB)商品を展開し、1日3回の強力な物流システムの採用で新鮮な商品提供を可能にしています。
フランチャイズモデルや海外展開の成功も高収益化に寄与しています。

株式会社セブン&アイ・ホールディングス
コンビニエンスストア・総合スーパー・百貨店・食品スーパー・フードサービス・金融サービス・IT/サービス各事業を中心とした企業グループの企画・管理・運営(純粋持ち株会社)
イオン株式会社
日本最大級の総合小売企業で、ショッピングモールやスーパーマーケットを中心に展開しています。
イオングループ全体で約300社以上の企業を傘下に持ち、国内外で数千店舗を展開しています。
「イオンモール」「マックスバリュ」「イオンスタイル」など、多様な業態で事業を展開し、各店舗が地域住民のライフラインとして機能するように、地元の農産物や商品を積極的に取り入れています。

イオン株式会社
純粋持株会社
ユニクロ(株式会社ファーストリテイリング)
アパレル分野で日本を代表する小売企業であり、世界展開するグローバルブランドです。
ユニクロの店舗数は約2,400店に達し、そのうち約1,000店舗が海外に置かれています。
「製造小売業(SPA)」モデルを採用し、「ヒートテック」「エアリズム」などの機能性商品が人気です。
AIを活用した在庫管理やオンラインと店舗の連携を強化する「オムニチャネル戦略」を推進しています。

株式会社ファーストリテイリング
株式又は持分の所有によるグループ全体の事業活動の支配・管理等
エイチ・ツー・オー リテイリング株式会社
エイチ・ツー・オー リテイリング株式会社は、阪急阪神東宝グループの一員として、百貨店や食品スーパー、商業施設などを展開する持株会社です。
主力事業である「阪急百貨店」と「阪神百貨店」は、大阪・梅田を拠点に高級品や食品分野で強みを持ち、地域密着型の戦略を推進しています。
また、食品製造や宅配サービスも手掛け、リアルとデジタルを融合した独自のビジネスモデルを構築しています。

エイチ・ツー・オーリテイリング株式会社
株式会社近鉄百貨店
株式会社近鉄百貨店は、近鉄グループの主要企業として、関西を中心に百貨店事業を展開しています。
本社は大阪市阿倍野区の「あべのハルカス」にあり、地域密着型のサービスと多店舗展開が特徴です。
主力店舗である「あべのハルカス近鉄本店」は、日本最大級の売場面積を誇り、幅広い商品ラインナップと高品質なサービスで知られています。
また、商業施設の運営やオンラインショップにも注力し、顧客ニーズに応える多角的な事業展開を行っています。

株式会社近鉄百貨店
百貨店業
株式会社西松屋チェーン
株式会社西松屋チェーンは、ベビー・子ども用品の専門店チェーンとして全国展開を行う企業で、1956年設立以来、マタニティ用品から新生児・子ども向けの衣類や育児用品まで、幅広い商品を手頃な価格で提供しています。
全国に1,100店舗以上を展開し、高品質かつ低価格な商品を通じて、子育て家庭の生活を支えることを使命としています。
また、効率的な店舗運営と自社開発商品の強化により、少子化社会への貢献を目指しています。

株式会社西松屋チェーン
ベビー・子ども用品の専門店チェーン
小売業を代表する企業の共通点
小売業を代表する企業には共通点があります。
顧客満足度の追求
徹底した顧客目線で独自の商品やサービスを開発し、決して独善的にならず、潜在的なニーズにも的確に応えています。
効率的な物流と在庫管理
ロジスティクスを中心に効率的なサプライチェーンを構築し、欠品による機会損失を防ぎ、商品供給を安定させています。コンビニで生まれたPOSシステムは、AIの活用などでさらに進化し、高精度な未来予測ができるようになっています。
テクノロジーの活用
AI、ビッグデータ、電子マネーなどの先端技術をフル活用し、顧客の利便性を追求し、競争力を向上させています。キャッシュレス決済、OMO(Online Merges with Offline)戦略、デジタルサイネージ、顧客行動分析などはより高度化され、パーソナライズされた顧客体験を提供してくれるでしょう。
グローバル展開
国内市場にとどまらず、日本の高水準サービスを国際市場でも展開し、積極的なグローバル化を進めています。セブンイレブン、ユニクロ、無印良品、100円ショップのダイソーなどは、海外での売上を伸ばしています。
まとめ
小売業は、誰にとっても最も身近なビジネスで、食料品や衣料品など、消費者の日常生活に必要な商品を提供する重要な産業として親しまれています。
その特色は事業者の多様化と市場変化の激しさにあります。
日本国内では、個人が経営する地域密着型の店舗から、全国規模やグローバル展開する巨大企業まで、実に幅広い業態が併存しています。
また、商品提供を通じた消費者のライフスタイル向上に寄与するだけではなく、雇用を通じた地域社会への貢献も小売業の隠れた役割でもあります。
一方で、EC市場の急速な成長や消費者ニーズの多様化など、常に変化の波に晒されており、新しい課題と対峙しなければならない厳しい条件下に置かれています。
AIやビッグデータの活用などの技術革新により、在庫切れや食品ロスが防止され、レコメンド機能が精緻になり、欲しいものがすぐ手に入るという、小売業の新たな未来が作られていくかもしれません。
また、ロボットなどを活用した省力化も推進されていくでしょう。
小売業は単なるビジネスではなく、社会に対する価値提供の場、そして人の人生を彩る場として、さらなる進化を遂げる可能性を秘めています。
小売業の発展に注目が集まります。