
不動産業と物品賃貸業は、まったく異なる業界ながら、日本標準産業分類においては「大分類K」として、同じカテゴリーに位置づけられています。
不動産取引は売買金額が高額となり、資産価値は目減りしにくいため、景気動向にも影響を与え、日本経済の潤滑油的役割を果たす産業と認識されています。
都市部の再開発事業はひとつの街をつくるような壮大な取り組みで、経済への波及効果は計り知れません。
一方の物品貸与も、ミニマリストに代表されるような「所有しないライフスタイル」の定着で、レンタル分野で多様なビジネスが展開されるようになっており、新たな経済圏の創出を望む声もあがっています。
不動産業・物品賃貸業の特色、業種を代表する企業、産業規模などを中心に、その重要性について詳しく解説します。
不動産業・物品賃貸業の概要

不動産業とは
不動産業は、土地や建物を取り扱う産業で、売買、賃貸、仲介、管理、開発などが主なビジネス形態です。
個人向けの住宅用不動産だけではなく、商業施設、オフィスビル、物流施設など、ビジネスでの不動産需要も多く、幅広い分野で活動が展開されます。
特に東京の丸の内や六本木などの一等地では、再開発などを通じ、限られた土地を効率的に活用し、経済価値を高める役割を担っています。
インフラ整備を含めた「都市開発」を担い、未来を創る壮大な仕事といえるでしょう。
物品賃貸業とは
物品賃貸業は、車両、オフィス機器、機械設備、娯楽機器など、幅広いジャンルでの物品を貸与するビジネスです。
個人向けのレンタルサービスから、企業向けのリースまで、利用者の多様なニーズに応えています。
一般的にはレンタカーやカーシェアが馴染み深いかもしれません。
最近では、アパレルや家具、電化製品など、サブスクリプション型サービスが成長しており、新たな市場が開拓されています。
産業分類における位置付けと役割

日本標準産業分類における「大分類K」には、不動産業と物品賃貸業が位置づけられ、土地や建物の効率的な活用、物品の適正な流通を促進する業種として認識されています。
中分類 68 不動産取引業
- 680 管理,補助的経済活動を行う事業所(68不動産取引業)
- 6800 主として管理事務を行う本社等
- 6809 その他の管理,補助的経済活動を行う事業所
- 681 建物売買業,土地売買業
- 6811 建物売買業
- 6812 土地売買業
- 682 不動産代理業・仲介業
- 6821 不動産代理業・仲介業
中分類 69 不動産賃貸業・管理業
- 690 管理,補助的経済活動を行う事業所(69不動産賃貸業・管理業)
- 6900 主として管理事務を行う本社等
- 6909 その他の管理,補助的経済活動を行う事業所
- 691 不動産賃貸業(貸家業,貸間業を除く)
- 6911 貸事務所業
- 6912 土地賃貸業
- 6919 その他の不動産賃貸業
- 692 貸家業,貸間業
- 6921 貸家業
- 6922 貸間業
- 693 駐車場業
- 6931 駐車場業
- 694 不動産管理業
- 6941 不動産管理業
中分類 70 物品賃貸業
- 700 管理,補助的経済活動を行う事業所(70物品賃貸業)
- 7000 主として管理事務を行う本社等
- 7009 その他の管理,補助的経済活動を行う事業所
- 701 各種物品賃貸業
- 7011 総合リース業
- 7019 その他の各種物品賃貸業
- 702 産業用機械器具賃貸業
- 7021 産業用機械器具賃貸業(建設機械器具を除く)
- 7022 建設機械器具賃貸業
- 703 事務用機械器具賃貸業
- 7031 事務用機械器具賃貸業(電子計算機を除く)
- 7032 電子計算機・同関連機器賃貸業
- 704 自動車賃貸業
- 7041 自動車賃貸業
- 705 スポーツ・娯楽用品賃貸業
- 7051 スポーツ・娯楽用品賃貸業
- 709 その他の物品賃貸業
- 7091 映画・演劇用品賃貸業
- 7092 音楽・映像記録物賃貸業(別掲を除く)
- 7093 貸衣しょう業(別掲を除く)
- 7099 他に分類されない物品賃貸業
不動産業・物品賃貸業の特色

サービスの多様化
不動産業特徴のひとつは、土地や建物に関連するサービスの奥深さです。
取り扱う金額が大きいため、賃貸物件の仲介、不動産売買、建物の管理、リノベーション、さらには不動産投資のコンサルティングなど、さまざまな形で利益を生み出す機会がつくられており、そのおいしさにより、他業界からの新規参入も増え、競争は激化しています。
また、近年はIT技術を活用したデジタルサービスが急速に普及しています。
不動産テック(PropTech)と呼ばれる分野では、AIを活用した物件検索やWEBでのバーチャル内見などが実用化され、消費者の利便性の一助となっています。
シェアリングエコノミーの拡大
物品賃貸業では、従来のレンタルに加え、シェアリングエコノミーが重要なキャッシュポイントになりつつあります。
カーシェアリング、シェアハウス、家具レンタル、アパレルレンタルなど、従来の「所有」から「利用」への変化が進む中で、レンタル業界の需要は高まり続けています。
一方で、高級時計のシェアリングで大規模な詐欺が発生するなど、制度自体が未整備であるため、普及の阻害要因となっている面は否定できないでしょう。
DeNAの個人間カーシェアリングサービス終了のニュースは、シェアリングの難しさを象徴しているかもしれません。
不動産業・物品賃貸業の市場規模

不動産業の市場規模
国内の不動産業の市場規模
不動産業の市場規模は国内総生産(GDP)の約10%を占めるとされています。不動産業全体の年間売上高は約42兆円に達しており、住宅、不動産取引、土地活用、商業施設、オフィス賃貸などの幅広い分野で収益が生まれています。
賃貸住宅や商業施設の賃貸収益は年間売上高は約15兆円。住宅や土地、商業施設の売買市場は年間約20兆円の規模。建物管理やメンテナンス市場は約7兆円です。
商業不動産市場の動向
商業不動産市場では、大都市圏を中心にオフィス需要や物流施設需要が高まっています。リモートワークの普及により、オフィス需要が一時的に減少したものの、最近ではハイブリッド勤務への移行を背景に、柔軟なオフィススペース(シェアオフィスやコワーキングスペース)の需要が拡大しています。
住宅市場の規模
住宅不動産市場も日本の不動産業の重要なセグメントです。賃貸住宅市場は安定した需要があり、賃貸経営を行うオーナーや投資家にとって魅力的な分野となっています。
住宅不動産全体の売買・賃貸を含めた市場規模は相当額に達しており、特に中古住宅市場の拡大やリノベーション需要の増加が顕著になっています。
物品賃貸業の市場規模
国内の物品賃貸業の市場規模
物品賃貸業の市場規模は不動産業と比べると小規模ですが、特定の分野では高い成長率を誇り、物品賃貸業の年間売上高は約6兆円とされています。
自動車リース・レンタル市場の年間売上高は約2.5兆円。建設機械レンタル市場は約1兆円の規模で、家具・家電レンタル市場は新生活や法人需要に支えられ、数千億円規模。衣料品レンタル市場はサブスクリプション型サービスの普及により成長中で、特にドレスやスーツのレンタルが人気となっています。
サブスクリプション型サービスの拡大
物品賃貸業では、月額定額制のサブスクリプションサービスが市場拡大を後押ししています。家具や家電、衣料品など、消費者ニーズに応じた柔軟なサービスが人気を集めています。
法人向け物品賃貸の拡大
法人向けのリースやレンタルサービスも市場の大きな割合を占めています。特にオフィス機器やIT機器のリースは、企業の運営コスト削減ニーズに応えるかたちで底堅いマーケットを形成しています。
市場規模に影響を与える要因
人口減少と高齢化
人口減少と高齢化は、不動産業・物品賃貸業の市場に直接的な影響を与えると考えられます。特に地方の住宅や賃貸物件の需要減少が予測される一方、高齢者向けのバリアフリー物件やケア用品レンタル市場は成長の可能性があります。
デジタル化と新サービスの拡充
デジタル技術の導入により、顧客体験の向上や業務効率化が進み、新しい市場が創出されています。不動産テックやサブスクリプション型サービスは、市場規模を押し上げる重要な要素になると期待されています。
不動産業・物品賃貸業を代表する企業

不動産業の代表企業
三井不動産株式会社
東京の日本橋の再開発を手掛けるなど、日本を代表する総合不動産企業で、商業施設、オフィスビル、住宅など幅広い分野に展開しています。

三井不動産株式会社
不動産業
住友不動産株式会社
都心部の再開発プロジェクトや高級マンション開発で知られています。

住友不動産株式会社
ビルの開発・賃貸 マンション・戸建住宅の開発・分譲 宅地の造成・分譲 海外不動産の開発・分譲・賃貸 建築土木工事の請負・設計・監理 不動産の売買・仲介・鑑定 ほか
三菱地所株式会社
国内不動産業の雄で、丸の内一帯の開発で安定した収益を得ています。

三菱地所株式会社
不動産業
平和不動産株式会社

平和不動産株式会社
不動産業
東京建物株式会社

東京建物株式会社
オフィスビル・商業施設等の開発、賃貸及び管理 マンション・戸建住宅の開発、販売、賃貸及び管理 不動産の売買、仲介及びコンサルティング・駐車場の開発、運営 リゾート事業、シニア事業、資産運用事業、海外事業、不動産鑑定業
京阪神ビルディング株式会社

京阪神ビルディング株式会社
野村不動産ホールディングス株式会社

野村不動産ホールディングス株式会社
物品賃貸業の代表企業
オリックス株式会社
自動車リースからオフィス機器のリースまで多岐にわたる事業を展開しています。プロ野球の球団所有でも馴染み深いかもしれません。

オリックス株式会社
多角的金融サービス
レンタルのニッケン
建設機械レンタル業界のリーディングカンパニーです。

株式会社レンタルのニッケン
土木・建築・産業関連機械を中心としたレンタル、 自社商品開発・製造・販売・修理
不動産業・物品賃貸業の未来予測

デジタル化とテクノロジーの進化
不動産テック(PropTech)の進化
不動産業界では、AI、IoT、ビッグデータ、VRなどの先端技術を活用した「不動産テック(PropTech)」が進化しています。従来のアナログ型業務が効率化され、顧客体験が向上するだけでなく、新しいサービスモデルが生まれています。
ビッグデータを活用して、物件の適正価格や地価の将来予測を行うAIによる価格査定サービスが拡大し、現地を訪問せずに、VR技術を利用して物件を内覧できるサービスも普及しています。スマートホームやオフィスでIoTデバイスを活用し、居住者の利便性向上を図る近未来ももうすぐそこまで来ています。
賃貸業界のデジタルプラットフォーム化
物品賃貸業では、プラットフォーム型ビジネスが拡大しています。家具や家電、ファッションなどのオンラインレンタルサービスが増加しており、個人向けにも法人向けにも便利なレンタルエコノミーが進展しています。
サステナビリティの追求
環境に配慮した不動産開発
気候変動やSDGs(持続可能な開発目標)の影響を受け、環境に配慮した不動産開発が今後の主流となるでしょう。再生可能エネルギーの活用、省エネルギー建築、カーボンニュートラルのオフィスや住宅の需要が高まっています。
循環型経済の促進
物品賃貸業では、循環型経済の概念がトレンドです。レンタル品をリユース・リサイクルして環境負荷を減らし、持続可能なビジネスモデルを構築する動きが活発化しています。
消費者ニーズの多様化
シェアリングエコノミーの拡大
シェアリングエコノミーの台頭で個人が「所有」から「利用」へと価値観をシフトさせています。これにより、賃貸業界全体で新たな市場が生まれています。
自家用車を持たず、必要なときだけ車を利用するカーシェアリングが普及しており、若者の車離れの象徴と捉えられています。また、自宅や空きスペースを短期間で貸し出すスペースレンタルビジネスが増加しています。広義ではコインパーキングもシェアリングの一部かもしれません。
サブスクリプション型サービスの拡大
物品賃貸業では、サブスクリプション型サービスが顧客の支持を得ています。月額定額で製品やサービスを利用できるモデルは、利便性やコストパフォーマンスを重視する消費者に好まれています。
地方創生とリモートワークの進展
地方不動産市場の活性化
リモートワークの普及で地方不動産市場への注目が集まっています。移住先(都市部に通勤できる範囲)として人気の高い地方都市やリゾート地では、不動産価格の上昇が見られます。地方の空き家や古民家を活用したリノベーション事業やワーケーション向けの施設整備も注目されています。
二拠点居住の広がり
リモートワークを背景に都市と地方で生活を分ける「二拠点居住」の需要が増加しています。この動きは、賃貸住宅市場に新たな需要を生み出しつつあります。
法規制・政策の影響
空き家対策と税制の見直し
空き家問題への対応として、自治体や政府による政策や規制が強化されています。空き家を活用した新規ビジネスの支援や固定資産税の優遇措置の見直しが進行中です。
民法改正と契約のデジタル化
不動産契約において電子契約の導入が拡大しており、契約手続きの効率化やペーパーレス化が推進され、顧客満足度の向上にもつながっています。
AIとデータ活用による市場の効率化
AIを活用した価格査定とリスク管理
AI技術を活用した不動産の価格査定や投資リスク分析が進化しており、不動産投資家や事業者は精度の高い意思決定が可能となり、資産運用が効率化します。
ビッグデータを活用した市場予測
消費者行動データや市場動向を分析するビッグデータの活用が進み、物件価格の動向や需要予測に役立てられています。
不動産業・物品賃貸業の課題

不動産業の課題
地価の二極化と地域間格差の拡大
人口減少と高齢化により、都市部と地方での地価の格差が拡大しています。大都市圏では地価の上昇が続く一方、地方都市や過疎地での地価低迷が顕著です。この二極化は、不動産業の収益性に直接影響を与えるだけでなく、地域活性化にも悪影響を及ぼす危険性があります。
空き家問題
人口減少、核家族化、都市部への人口集中により、全国的に空き家が増加しています。日本の空き家率は約14%に達しており、今後もさらに増加する見込みです。空き家の放置は景観や治安の悪化につながり、不動産業界の新たなビジネス機会の足かせになりかねません。空き家を活用したリノベーションやシェアハウス化など、新たな用途の提案が求められています。
デジタル化への対応とIT人材不足
不動産テック(PropTech)と呼ばれるデジタル化の波が不動産業界にも広がっています。AIやIoT、ビッグデータを活用したサービスの提供が進んでいますが、こうした新技術を導入するためのIT人材不足が喫緊の課題です。
物品賃貸業の課題
競争激化と収益性の低下
シェアリングエコノミーの拡大で新規参入企業が増え、競争が激化しています。特にオンラインプラットフォームを活用したレンタル事業者が急増しており、価格競争が収益性を圧迫しています。サービスの差別化や顧客ロイヤルティの向上が必要になるでしょう。
法規制や契約トラブルの増加
物品賃貸業では、貸出中の破損や紛失、未払いトラブルなどのリスクがあります。契約条件の明確化、保険制度の活用、法規制対応への準備など、シェアリングエコノミー型サービスの環境整備も強化されつつあるものの、ビジネスモデル自体を見直す必要性が生じている実態も否定できないでしょう。
まとめ
不動産業は高額取引になる特徴からも、日本経済への影響が大きく、景気の行方を左右する重要な産業と認識されています。
土地や建物の販売や賃貸だけでなく、都市開発や資産運用への展開といった多面的な役割を果たしており、金融業界とも密接に関連しています。
一方、物品賃貸業は、所有から利用へという消費者の価値観の変化を追い風に、カーシェアリングや家具のサブスクリプションといった新サービスが急速に認知度を高めています。
また、両業界では、近年デジタル技術の導入が進み、オンラインサービスやAIを活用した顧客対応が進化しています。
他方、法規制、地価の二極化、環境負荷への対応など、多くの課題も抱えています。
今後、不動産業・物品賃貸業が成長し続けるためには「デジタル化」がひとつの解になるでしょう。
不動産業・物品賃貸業は、単に土地やモノを受け流すだけでなく、人々の暮らしを支え、経済を動かし、未来創造へのエンジンの役割も担っています。
社会変容と共に進化を継続できるのか、その動向に注目しましょう。
(一社)住宅生産団体連合会
(公財)東日本不動産流通機構
(公社)首都圏不動産公正取引協議会
(公財)不動産流通推進センター
(一財)不動産適正取引推進機構
(公社)日本不動産学会
(一社)住宅履歴情報蓄積・活用推進協議会
(一財)住宅金融普及協会
住宅保証機構(株)
(株)住宅あんしん保証
(株)日本住宅保証検査機構
(株)ハウスジーメン
ハウスプラス住宅保証(株)
不動産団体連合会
不動産公正取引協議会連合会
全住協NET
(一社)マンション管理業協会
(公財) マンション管理センター
(一社) 日本ビルヂング協会連合会
(一財)日本ビルヂング経営センター
(社)リース事業協会
(社)全国レンタカー協会
(社)日本建設機械レンタル協会
(社)建設荷役車両安全技術協会
北海道自動車リース協会
東北自動車リース協会
北陸信越自動車リース協会
東京自動車リース協会
中部自動車リース協会
近畿自動車リース協会
中国自動車リース協会
四国自動車リース協会
九州自動車リース協会