
パルプ・紙・紙加工品製造業は、一般に馴染みが薄いかもしれませんが、原料の木材パルプや古紙から、紙の製造や紙製品の加工をする産業です。
製紙業やパルプ製造業を中心に構成され、新聞紙、印刷用紙、段ボール、ティッシュペーパー、トイレットペーパーなど、ビジネスや日常生活で使用される多種多様な紙製品を供給しています。
また、デジタル化に伴うペーパーレスへの流れ、さらにエコな社会を目指す中で、膨大なエネルギーを消費する製造過程の見直し、リサイクルや環境負荷軽減への取り組みが進んでおり、業界全体が変化を遂げつつあります。
パルプ・紙・紙加工品製造業の特色

パルプ・紙・紙加工品製造業は、高度な製造技術に加え、資源リサイクルを実現したサステナビリティに特徴があります。
循環型経済への貢献
紙製品はリサイクル率が非常に高く、古紙利用率が80%以上に達しています。
これは世界的にもトップクラスの水準で、業界全体で循環型経済を構築した証左です。
多様な製品群
馴染み深いトイレットペーパーやティッシュペーパー、新聞紙(年々生産量減)や印刷用紙だけでなく、段ボール、食品包装用紙や特殊な工業用紙、さらには医療用途の衛生製品など、幅広い紙製品を提供し、日常生活や産業活動のニーズに応えています。
高い技術力と品質管理
パルプ・紙・紙加工品製造業のストロングポイントは、高品質製品の製造技術とその安定供給です。
優れた研究開発体制に加え、最新技術を取り入れた製造設備で、精密な管理の下、高品質な紙製品を大量生産できる体制が構築されています。
また、サスティナブルな製造を目指し、環境規制を遵守する技術革新も実を結びつつあります。
産業分類におけるパルプ・紙・紙加工品製造業

日本標準産業分類において、パルプ・紙・紙加工品製造業は「大分類 E:製造業」の中の「中分類14」に位置づけられています。
以下の通りに細分化されています。
パルプ製造業
主に木材から化学的または機械的にパルプを製造する産業で、紙の原料となるセルロース繊維を生成します。
紙製造業
印刷用紙や新聞紙、包装用紙など、多種多様な紙製品を製造する業種です。
小分類~細分類
- 140 管理,補助的経済活動を行う事業所(14パルプ・紙・紙加工品製造業)
- 1400 主として管理事務を行う本社等
- 1409 その他の管理,補助的経済活動を行う事業所
- 141 パルプ製造業
- 1411 パルプ製造業
- 142 紙製造業
- 1421 洋紙製造業
- 1422 板紙製造業
- 1423 機械すき和紙製造業
- 1424 手すき和紙製造業
- 143 加工紙製造業
- 1431 塗工紙製造業(印刷用紙を除く)
- 1432 段ボール製造業
- 1433 壁紙・ふすま紙製造業
- 144 紙製品製造業
- 1441 事務用・学用紙製品製造業
- 1442 日用紙製品製造業
- 1449 その他の紙製品製造業
- 145 紙製容器製造業
- 1451 重包装紙袋製造業
- 1452 角底紙袋製造業
- 1453 段ボール箱製造業
- 1454 紙器製造業
- 149 その他のパルプ・紙・紙加工品製造業
- 1499 その他のパルプ・紙・紙加工品製造業
パルプ・紙・紙加工品製造業の規模

日本のパルプ・紙・紙加工品製造業は、国内市場だけでなく、世界においても重要な地位を占めています。
国内市場規模
国内の紙製品出荷額は約4兆円に達しています。
このうち、包装・段ボール用紙が全体の約30%を占めるなど、物流や食品包装の需要が堅調に推移しています。
EC市場のさらなる拡大で、段ボール需要は増大すると予想されています。
国際的な影響力
日本は世界有数の製紙大国であり、特にアジア地域への輸出が盛んです。
中国や東南アジア諸国を中心に、紙製品の需要が拡大しており、日本の高品質な製品への期待は高いといえます。
雇用と経済への寄与
パルプ・紙・紙加工品製造業は約10万人以上の雇用を生み出しており、特に、製紙工場が多く存在する地方都市では、地域経済を支える柱になっています。
パルプ・紙・紙加工品製造業を代表する企業

日本には、高い技術力で世界的に知られる製紙企業が多数存在し、世界市場でも存在感を見せつけています。
王子ホールディングス株式会社
国内外に100以上の拠点を持つグローバル企業であり、パルプから紙、紙加工品まで幅広い製品を展開しています。
また、環境負荷軽減の製品開発にも積極的に取り組み、持続可能な社会づくりに貢献しています。

王子ホールディングス株式会社
● 産業資材 段ボール原紙事業、段ボール加工事業、白板紙・包装用紙事業、紙器・製袋事業 ● 生活消費財 家庭用紙事業 ● 機能材 特殊紙事業、感熱紙事業、粘着事業、フィルム事業 ● 資源環境ビジネス 木材事業、パルプ事業、エネルギー事業 ● 印刷情報メディア 新聞用紙事業、印刷・出版・情報用紙事業 ● その他 不動産事業、機械事業、商事ほか
日本製紙株式会社
新聞用紙や段ボール原紙の分野で国内トップクラスのシェアを誇ります。
バイオマスエネルギーの活用や新素材の開発など、環境と経済の両立を目指した革新的な取り組みに特徴があります。

日本製紙株式会社
紙パルプ製造販売
大王製紙株式会社
家庭紙分野で「エリエール」ブランドを展開し、消費者に広く知られるように、高品質なティッシュペーパーやトイレットペーパーの製造で強みを持っています。

大王製紙株式会社
紙・板紙・パルプ・日用品雑貨等の製造加工並びに販売
北越コーポレーション株式会社
特殊紙や高機能紙の分野に特化し、工業用途で高い評価を得ており、海外市場への進出も積極的に推進しています。

北越コーポレーション株式会社
紙・パルプの製造・販売
三菱製紙株式会社

三菱製紙株式会社
紙・パルプ・写真感光材料の製造、加工および販売
中越パルプ工業株式会社

中越パルプ工業株式会社
紙パルプ製造業
レンゴー株式会社

レンゴー株式会社
板紙、段ボール・段ボール箱、軟包装製品等の製造・販売
特種東海製紙株式会社

特種東海製紙株式会社
紙パルプ製造・販売
パルプ・紙・紙加工品製造業の課題と展望

パルプ・紙・紙加工品製造業は、以下の課題と展望を抱えています。
課題
環境問題への対応
最も大きな課題のひとつは環境問題への対応で、森林資源の持続可能な利用と製造プロセスでの環境負荷削減が求められています。特に、紙製品の需要増加に伴う木材パルプの使用量増加は、森林伐採や生物多様性の損失につながる可能性があると指摘されています。
デジタル化による需要減
新聞や書籍などの印刷用紙市場は、デジタル化の進展に伴い需要が激減しています。今後、この需要は一層衰退し、近い将来、一部を除きほぼ消滅すると予想されています。
国際競争とコスト競争力の維持
近年は中国や東南アジア諸国の台頭により、国際競争が激化しています。新興国はコストを武器に低価格帯の製品を大量に供給しているため、価格競争に巻き込まれる公算が大きくなっています。今後は、高付加価値市場へのシフトを目指すべきでしょう。
展望
需要増加への期待
段ボールや包装紙、特殊紙の需要が増加傾向にあります。特に、ECの拡大で輸送用段ボールの需要が急増しており、製紙業界の成長領域になっています。今後は電子デバイス向け材料や医療用特殊紙など、新たなニーズも期待できそうです。
プラスチック代替素材として
世界的な脱プラスチックの動きにより、紙製品が再注目されています。紙ストローや紙製の食品包装材、紙ボトルなど、紙での代替が広がっています。しかし、プラスチック代替製品は従来よりも高い製造コストが課題で、大量生産によるコスト削減や技術革新が必須です。
持続可能な生産の推進
古紙リサイクルの推進や森林認証制度の導入が進められています。古紙の利用率はすでに高水準を維持しており、多くの製品がリサイクル可能な形で生産されています。大手製紙企業はバイオマスエネルギーや再生可能エネルギーを活用した製造設備を増設するなど、二酸化炭素排出量削減の取り組みを進めています。
イノベーションによる成長機会
製造技術の革新とイノベーションが成長の鍵になるでしょう。大手を中心に次世代材料の開発を進められ、自動車部品や医療材料など、新たな分野への転用も期待されています。
まとめ
トイレットペーパーやティッシュペーパーのない生活が想像できないように、パルプ・紙・紙加工品製造業は、人々の日常生活を支える重要産業として社会に貢献しています。
新聞や書籍などの印刷用紙需要が急減する中、新たな市場開拓が業界の課題になっています。
また、森林資源に与える影響などの環境負荷を抑えて、業界全体が持続可能な成長を目指す取り組みが顕著になっています。
特にリサイクル率の向上や製造プロセスの負荷軽減は、大手企業を中心に先行投資がなされています。
EC市場の活況に伴う段ボール需要の増加など、国内市場の需要変化に対応しつつ、中国や東南アジア諸国などの新興国に伍していくための国際競争力向上が今後の課題でしょう。
さらなる発展には、業界全体での連携と技術革新が必要不可欠で、紙の持つ可能性の拡大に向けた動きが期待されます。