石油製品・石炭製品製造業の特徴や業界の中心企業

石油製品・石炭製品製造業は、石油や石炭を原料とする製品を製造する産業で、エネルギー供給を担い、日常生活と産業活動を支える役割を果たしています。

日々の生活に不可欠なガソリンや灯油などを製造し、広く供給してくれるのが、この石油製品・石炭製品製造業なので、一見イメージしづらいですが、実は身近な製品を作っています。

主に、ガソリン、軽油、重油、ジェット燃料などの燃料系製品に加え、化学工業や建設資材用の潤滑油、アスファルト、石油化学製品といった付加価値の高い多様な製品を供給しており、国内外の経済や社会の発展に大きなインパクトを与えています。

石炭製品では、コークスや炭素材料があげられ、これらは製鉄や製造業に欠かせない素材として需要に応えています。

石油製品・石炭製品製造業はエネルギー供給の中核を担いながらも、国際的な需要や価格変動からの影響が避けられない立場にいます。

さらに、環境保護や脱炭素社会の実現に向けた動きが加速しており、産業全体としてサスティナブルへの取り組みが強く求められています。

石油製品・石炭製品製造業の特色

幅広い製品ラインアップ

石油製品・石炭製品製造業の特徴のひとつは、製品多様性です。

石油製品には、ガソリンや軽油といった馴染み深い自動車燃料のほか、ジェット燃料や船舶用燃料などの輸送関連製品、さらには普段見ることがない、ナフサ、潤滑油、アスファルト、石油化学製品などが含まれます。

石炭製品では、コークスが製鉄業に不可欠であるほか、カーボンブラックや炭素繊維がさまざまな産業で活用されています。

需給と価格の影響

原油や石炭の輸入価格、また為替相場にも大きく影響されるポジションにあります。

特に、原油価格は国際市場において変動しやすいため、製品価格や収益性に直接影響を与えます。

また、地政学的リスクがあり、各国の事情も大きく左右されてしまうため、大国のエネルギー政策次第で業況が一変するリスクを孕みます。

その意味で「まな板の上の鯉」にならざるを得ない、厳しい立場にあります。

技術と環境の両立

近年では、製品の高付加価値化に加え、効率的な生産技術が重要視される傾向にあります。

同時に、脱炭素社会への転換が求められ、バイオ燃料やリサイクル技術などの研究開発が進展していますが、これは環境負荷軽減と競争力強化を同時に追求するもので、高い問題解決能力が求められる難題になっています。

産業集積と立地

石油製品・石炭製品製造業は、原油や石炭などの原材料を輸入するが必要であるため、主に港湾地域(その付近の産業団地)に立地しています。

京浜地区や阪神地区に代表されるように、石油化学コンビナートを形成し、製造コストの削減と効率的な資源活用を可能にします。

また、製品輸送の利便性や他産業との連携を考慮して、意外にも都市近郊に多くの施設が配置されています。

産業分類における石油製品・石炭製品製造業

日本標準産業分類において、石油製品・石炭製品製造業は「中分類17」とされ、以下の分類が含まれます。

いずれも日本国内のエネルギー供給に密接に関連しており、各分野で高度な技術が活用されています。

小分類~細分類

  • 170  管理,補助的経済活動を行う事業所(17石油製品・石炭製品製造業)
    • 1700  主として管理事務を行う本社等
    • 1709  その他の管理,補助的経済活動を行う事業所
  • 171  石油精製業
    • 1711  石油精製業
  • 172  潤滑油・グリース製造業(石油精製業によらないもの)
    • 1721  潤滑油・グリース製造業(石油精製業によらないもの)
  • 173  コークス製造業
    • 1731  コークス製造業
  • 174  舗装材料製造業
    • 1741  舗装材料製造業
  • 179  その他の石油製品・石炭製品製造業
    • 1799  その他の石油製品・石炭製品製造業

石油製品・石炭製品製造業を代表する企業

日本国内の主要企業

日本国内では大手企業がこの業界を牽引しています。

業界のリーディングカンパニーは、石油精製から化学製品製造、販売までの一貫体制を構築しており、国内外に広がる供給網を持っています。

また、各社は環境負荷軽減を目的としたバイオ燃料の開発や水素エネルギー事業にも注力しています。

ENEOS株式会社

ENEOS株式会社は、日本最大級のエネルギー企業で、石油製品の精製・販売やガス・電力事業を展開しています。

再生可能エネルギーや水素供給にも注力し、持続可能な社会の実現を目指しながら、国内外で幅広いサービスを提供し、社会の発展に貢献しています。

ENEOS株式会社

・石油製品(ガソリン・灯油・潤滑油等)の精製および販売 ・ガス(LPG・LNG)の輸入および販売 ・電力の発電および販売 等

出光興産株式会社

出光興産株式会社は、エネルギー供給を中心に事業を展開する日本の大手法人で、独自の理念を持った経営をしています。

石油精製・販売から化学製品の製造、再生可能エネルギーの開発まで幅広い分野に取り組み、環境保護と持続可能な社会の実現を目指しながら、世界各国で事業を展開し、地域社会への貢献を重視した活動を行っています。

出光興産株式会社

・石油精製並びに油脂製造、販売 ・石油化学製品の製造・販売 ・石油、石炭、地熱、その他鉱物資源の調査、開発並びに採取 ・農業薬品、農業用資材並びに化学薬品製造業 ・電子機能材料の開発、製造および販売 ・各種化学工業用および環境保全用機械設備・機器の設計、施工、製作および売買 ・不動産の売買、賃貸借、管理 ・コンピューターソフトウェアの開発、販売およびコンサルティング

コスモエネルギーホールディングス株式会社

コスモエネルギーホールディングス株式会社は、石油精製・販売を中心に、再生可能エネルギーや風力発電などの環境事業にも注力する日本のエネルギー企業です。

コスモエネルギーホールディングス株式会社

国際的な主要企業

国際的には、エクソンモービル(ExxonMobil)、ロイヤル・ダッチ・シェル(Royal Dutch Shell)、BP、シェブロン(Chevron)といった多国籍企業が代表格として市場に君臨しています。

これらの企業は、世界中で石油・石炭製品の生産や販売を行い、業界全体の方向性を左右するリーダー的存在で、さすがの日本企業も太刀打ちできない規模を有しています。

石油製品・石炭製品製造業の規模

石油製品・石炭製品製造業は、国内経済において一定の規模を有しており、重要な役割を果たしています。

石油製品製造業の規模

国内市場規模

石油製品は、日本のエネルギー供給全体の約40%を占める重要な産業で、石油製品の国内市場規模は年間約30兆円超と推定され、主にガソリンや軽油、ジェット燃料などの輸送用燃料の需要によって支えられています。また、ナフサ(エチレンやプロピレンなど化学製品の原料)や潤滑油、アスファルトといった他の製品も産業やインフラ整備を支える基盤として貢献しています。

生産量と施設

日本国内には21の石油精製施設(製油所)が稼働しており、1日あたり約310万バレルの原油処理能力を持っています。これは世界の主要産油国や製油国との比較でも高い効率性と品質を誇る生産体制です。

雇用と経済への貢献

日本国内で約10万人以上の直接雇用を生み出し、関連する物流業や設備保守業を含めると、さらに多くの雇用を創出しています。また、製油所や石油化学コンビナートの巨大施設は、地域経済にとって重要な存在であり、地方経済を支える基盤となっています。

石炭製品製造業の規模

国内市場規模

主な需要先は製鉄業で、製鉄業で使用されるコークスは、製鉄の高炉工程で不可欠な素材であり、国内のコークス生産量は年間約3,000万トンに達しています。国内市場規模は数千億円規模と推定されますが、石油製品製造業と比較すると相対的に小規模です。

石炭製品の用途

石炭製品のうち、カーボンブラックや高強度炭素繊維などの炭素製品は、自動車部品や航空機素材、バッテリー材料としても需要が高まっています。特に、カーボンニュートラル社会に向けて軽量素材の需要が拡大しており、これが石炭製品製造業の新たな可能性を示唆しているといえそうです。

石油製品・石炭製品製造業の今後の動向

環境規制と市場変化

石油製品は、再生可能エネルギーや電動車(EV)の普及が需要に影響を与えます。

また、バイオ燃料や水素エネルギーといった新たなエネルギー源の研究開発が急速に進展している点もやや懸念です。

石炭製品では、再生可能エネルギーの拡大政策により、石炭火力発電の需要が減る一方、高性能炭素素材や製鉄業向けの需要増が継続されると期待されています。

新興国市場の成長

アジアやアフリカといった新興国市場では、インフラ整備や経済発展に伴い、石油製品や石炭製品の需要が高まると予測されており、製品輸出の可能性に明るい展望が持たれています。

石油製品・石炭製品製造業を支える競争力

高い技術力

日本の石油製品・石炭製品製造業は、石油精製における深層脱硫技術や水素化処理技術など、高度な精製技術や環境負荷削減技術で世界をリードしています。

また、石炭製品では高強度炭素繊維やカーボンブラックの製造において、独自の技術が競争力を支えています。

安定供給体制

日本の石油製品製造業は、備蓄分を含め、災害時や緊急時にも安定供給を維持する体制が整っています。

これにより、国内経済だけでなく、近隣諸国へのエネルギー供給の安定にも寄与しています。

まとめ

石油製品・石炭製品製造業は、国内のエネルギー供給基盤を担う重要な産業で、他業界への影響も大きいため、ある面では国策の一部として綿密な計画の元、運用されている特殊な業界ともいえます。

もし、石油製品・石炭製品製造業が停止してしまえば、トラック輸送や航空業界は機能不全となり、日本経済は完全に麻痺してしまうでしょう。

多様な製品ラインアップと高い技術力を持ち、多くの企業のニーズに応える反面、国際市場の変動の影響を受けやすく、加えて環境保護への対応という激変する市況にも直面しているため、その弱点を補う意味で持続可能なエネルギー社会の実現を目指し、新たな技術や事業モデルを模索しています。

今後、石油製品・石炭製品製造業は、国際的な競争力を維持しながらも、再生可能エネルギーの普及や脱炭素化の動きとともに、国内外での役割を果たすための戦略が求められているといえそうです。