
非鉄金属製造業は、日常生活に馴染みが薄い業界かもしれませんが、実は先端技術を陰で支える重要な産業です。
文字通り、鉄を含まない金属の製造・加工を行い、主にアルミニウム、銅、亜鉛、ニッケル、マグネシウムなどの金属が取り扱われ、それが電気・電子機器、建築資材、自動車部品、航空宇宙産業など幅広い分野で流用されます。
直近では、脱炭素化やEVシフトに伴い、軽量で高強度なアルミニウムの他、電池材料のニッケルやコバルトの需要が高まっています。
非鉄金属業界は「上流」「中流」「下流」の3つのビジネスモデルから成立しています。
上流では、金、銅、ニッケル、アルミニウムなどの非鉄金属の採掘を行いますが、これは「鉱業、採石業、砂利採取業」に分類されます。
次の中流からが非鉄金属製造業の範疇で、それらの製錬を行い、次の下流では製錬された加工品を電化製品などにさらに加工して販売します。
鉄鋼と異なり、軽量で耐食性に優れた非鉄金属は、高機能素材であり、かつ希少性があるので、リサイクル技術が発展し、積極的な再生利用が実現されています。
有限の鉱物資源を無駄なく活用するため、リサイクル技術が進んだ業界のひとつです。
非鉄金属製造業の特色

非鉄金属製造業は、いくつかの重要な特色を持っています。
多様な市場
非鉄金属は種類が多く、それぞれ異なる用途を持っています。
銅は電線や電子機器の配線に、アルミニウムは軽量で耐食性に優れるため、航空機や自動車に多用されます。
ニッケルやリチウムは電池材料として不可欠で、EVの普及とともに需要は急増していて、世界中で争奪戦がおこっています。
資源依存度
非鉄金属の多くは日本国内では産出されないため、輸入に依存せざるを得ず、鉱石価格の変動や為替レートの影響を大きく受ける特徴があります。
特に中国からの輸入分は、大きなリスク要因となります。
銅やアルミニウムなどは国際相場に連動するため、経済情勢によって価格が大きく変動します。
リサイクル技術の進展
非鉄金属は再利用しやすい素材が多いため、リサイクル技術が発展しています。
特にアルミニウムや銅はリサイクル率が高く、使用済み製品からの回収・再生が盛んです。
高付加価値製品の開発
近年は、単なる素材供給にとどまらず、半導体や電池材料などの高付加価値製品の開発が進んでいます。
電気自動車(EV)向けのバッテリー材料や5G通信機器に使用される高機能銅材など、技術革新に応じた新製品の投入が求められています。
環境規制対応
非鉄金属の製造には大量のエネルギーを消費する工程が含まれるため、温室効果ガスの排出削減が大きな課題となっており、各社は省エネルギー技術の導入やカーボンニュートラルを目指した取り組みを進めています。
特にアルミニウム業界では、再生アルミの利用拡大が重要視されています。
産業分類における非鉄金属製造業の位置づけ

日本標準産業分類では、非鉄金属製造業は「中分類 23」に分類され、以下のような小分類と細分類が存在します。
小分類~細分類
- 230 管理,補助的経済活動を行う事業所(23非鉄金属製造業)
- 2300 主として管理事務を行う本社等
- 2309 その他の管理,補助的経済活動を行う事業所
- 231 非鉄金属第1次製錬・精製業
- 2311 銅第1次製錬・精製業
- 2312 亜鉛第1次製錬・精製業
- 2319 その他の非鉄金属第1次製錬・精製業
- 232 非鉄金属第2次製錬・精製業(非鉄金属合金製造業を含む)
- 2321 鉛第2次製錬・精製業(鉛合金製造業を含む)
- 2322 アルミニウム第2次製錬・精製業(アルミニウム合金製造業を含む)
- 2329 その他の非鉄金属第2次製錬・精製業(非鉄金属合金製造業を含む)
- 233 非鉄金属・同合金圧延業(抽伸,押出しを含む)
- 2331 伸銅品製造業
- 2332 アルミニウム・同合金圧延業(抽伸,押出しを含む)
- 2339 その他の非鉄金属・同合金圧延業(抽伸,押出しを含む)
- 234 電線・ケーブル製造業
- 2341 電線・ケーブル製造業(光ファイバケーブルを除く)
- 2342 光ファイバケーブル製造業(通信複合ケーブルを含む)
- 235 非鉄金属素形材製造業
- 2351 銅・同合金鋳物製造業(ダイカストを除く)
- 2352 非鉄金属鋳物製造業(銅・同合金鋳物及びダイカストを除く)
- 2353 アルミニウム・同合金ダイカスト製造業
- 2354 非鉄金属ダイカスト製造業(アルミニウム・同合金ダイカストを除く)
- 2355 非鉄金属鍛造品製造業
- 239 その他の非鉄金属製造業
- 2391 核燃料製造業
- 2399 他に分類されない非鉄金属製造業
非鉄金属製造業の規模

非鉄金属製造業のマーケット
日本の非鉄金属製造業の市場規模は年間10兆円規模に達しており、鉄鋼業と並ぶ基幹産業で、日本経済を支える存在ですが、ここ数年は横ばいで推移しています。
世界市場においても、日本の非鉄金属メーカーは高い技術力を背景に国際競争力を維持し、高純度の金属精製技術やリサイクル技術の面では、アメリカや中国と並んでプレゼンスを発揮しているだけでなく、アルミニウムや銅は日本国内以外に、アジア市場向けにも多く生産されています。
EVシフトに伴う電池材料や来たるべきAI時代を支える半導体関連材料の需要拡大が続いているため、設備投資も活発です。
グローバルな視点で見ると、中国が最大の生産国であり、特にレアメタルの供給において圧倒的なシェアを持っている一方、日本企業は高付加価値分野や環境負荷の低い製造技術で競争力を発揮しており、今後もここを強みに存在感を出していく戦略になりそうです。
非鉄金属の主な分類
非鉄金属は大きく、「ベースメタル」「レアメタル」「貴金属」に分類されます。
ベースメタル
鉄、アルミ、銅など、埋蔵量・産出量ともに多く、製錬が比較的簡単で、社会インフラ構築に欠かせない、大きな需要のある金属です。
レアメタル
チタン、コバルト、ニッケルなど、存在が稀、かつ技術や経済的な理由で抽出困難な金属のうち、工業需要が存在するため、安定供給の確保が政策的に重要なもので、先端技術製品に欠かせない素材です。主な産出国に中国が存在しているため、政治的にも重要な戦略物資になっています。
貴金属
金や銀など、希少であり、加工性がよく、化学的に安定している金属です。
非鉄金属製造業を代表する企業

日本国内には、非鉄金属を扱う大手企業が複数存在し、それぞれが独自の強みを持っています。
住友金属鉱山株式会社
住友金属鉱山は、銅・ニッケルの製錬を中心に、電池材料や半導体関連の高機能材料を手掛ける企業です。
EV向けのニッケル供給や、リチウムイオン電池の正極材生産で国内トップクラスのシェアを誇ります。

住友金属鉱山株式会社
資源開発、非鉄金属製錬、機能性材料の製造および販売、その他
三菱マテリアル株式会社
三菱マテリアルは、銅製錬やアルミニウム加工のほか、セメント事業や金属リサイクルにも注力しています。
特に半導体向けの銅材料では高い技術力を有し、5Gやデータセンター向けの需要拡大が追い風となっています。

三菱マテリアル株式会社
非鉄金属製造業
古河機械金属株式会社
銅を中心とした非鉄金属製造に強みを持ち、リサイクル事業にも力を入れています。
また、鉱山開発や産業機械の製造にも関与しており、資源開発から最終製品まで幅広い事業を展開しています。

古河機械金属株式会社
産業機械、建設機械、トラック搭載型クレーン、非鉄金属、電子材料、化成品などの開発・製造・販売
株式会社UACJ
アルミニウム製品の最大手で、建築・自動車・飲料缶など多岐にわたる用途向けにアルミ材を供給しています。
特に自動車軽量化のトレンドを受け、アルミ合金の需要が増加しており、今後も成長が期待されています。

株式会社UACJ
アルミニウム製品に関する研究・開発・製造・販売
まとめ
非鉄金属製造業は、鉄を含まない多様な金属を扱う産業として、鉄鋼業とは異なる独自の特性を持ち、銅、アルミニウム、ニッケルなど、現代社会に不可欠な高度な素材を提供しています。
EV市場拡大による電池需要の増大、AIの爆発的利用に伴う高性能な半導体ニーズ、また再生可能エネルギーの普及といったトレンドも、非鉄金属製造業には追い風となるでしょう。
それだけに世界規模での競争も激化し、さらにリサイクル技術の発展と環境負荷低減の流れを受けて、持続可能な生産体制の構築が求められています。
日本の非鉄金属メーカーは、資源の乏しい国という厳しい制約の中で、高度な精錬技術やリサイクル技術を武器に競争力を維持しています。
非鉄金属の重要性は今後さらに高まることは必至なので、グローバルな市場環境を見据えながら、安定供給と技術革新の両立が生き残りの条件になりそうです。