
医療と福祉は、いわゆる病院や介護施設を指し、生きる上で不可欠で、健康的で豊かな人生を実現するために欠かせない産業です。
病気やケガをしても、国民皆保険制度の中で、安心して高度な医療が受けられる安心感は他国にはなく、日本社会の安定を下支えしています。
医療,福祉の特徴、代表的な企業、産業分類における位置づけ、市場規模などを詳細に解説します。
医療,福祉とは
医療と福祉はそれぞれ異なる役割を果たしつつも、人生の質(QOL)向上に寄与する重要な分野である点は共通しています。
医療と福祉の充実度によって、人生の充実度が左右されるといっても過言ではないはずです。
高齢化が進む中で、医療と福祉の役割がますます重要になっていますが、単なる社会的サービスではなく、雇用や地域経済の観点でも大きな影響力を持つ成長産業になっています。
医療
医療は病気やケガの診断、治療、予防を主眼とし、主に病院で、医師、看護師、歯科医などの専門職が対応します。
福祉
福祉は高齢者や障害者、子育て家庭を含むあらゆる人々が安心して暮らせる社会を目指し、生活支援や介護、社会保障制度など幅広いサービスを提供します。
特に高齢化率が30%近くに達する地域では、医療・福祉サービスの需要が急増しており、それに伴い関連産業のニーズが拡大しています。
医療,福祉の特色

医療と福祉の分野は、究極の「BtoC」といってもいい、ホスピタリティが最優先される業務なので、他の産業にはない独自の特色があります。
高度な専門性と倫理観の重要性
医療と福祉は、専門的な知識と技術に加え、なにより高い倫理観が強く求められます。
患者や利用者の命を預かり、生活そのものに深く関与するため、プロフェッショナルとしての責任が常に問われ続けます。
特に医療現場では、医療ミス防止のリスク管理が最重視されており、ヒューマンエラー対策が施されています。
福祉分野では認知症などにより判断能力が低下した高齢者であっても、個人の尊厳を尊重する姿勢が求められます。
利益最優先の姿勢とは一線を画す点に、この業界の難しさがあります。
技術革新とICTの活用
医療と福祉の分野では、テクノロジーの進化がサービスの質を向上させる原動力となっています。
AIやビッグデータ解析は診断精度を高め、マイナンバーカードに紐づいた電子カルテの普及は業務効率化に寄与しています。
また、福祉分野では、見守りセンサー、遠隔介護システム、ロボットの導入など、ICT(情報通信技術)技術を活用したサービスが実用化されています。
今後はますます高度化され、さらに普及していくと期待されており、これらの技術は特に介護人材が不足する過疎地域で効果を発揮するでしょう。
公共性と地域密着型サービス
医療と福祉は、誰もが対象者になる可能性があるため、非常に公共性が強い分野であり、予算も公金負担になるケースが多く、国や自治体の政策とも深く関わっています。
地域包括ケアシステムは、住み慣れた地域で医療や介護を一体的に受けられる仕組みとして注目されています。
産業分類における医療,福祉

日本標準産業分類の「大分類P:医療,福祉」は、医療・福祉関連分野がここに集約されており、広範な領域をカバーしています。
公共機関だけでなく民間企業も多く含まれており、特に近年は民間企業の役割が拡大しています。
また、医療費の増大は社会問題化しており、政策の観点から、制度そのものの見直しが必要な状況です。
中分類 83 医療業
- 830 管理,補助的経済活動を行う事業所(83医療業)
- 8300 主として管理事務を行う本社等
- 8309 その他の管理,補助的経済活動を行う事業所
- 831 病院
- 8311 一般病院
- 8312 精神科病院
- 832 一般診療所
- 8321 有床診療所
- 8322 無床診療所
- 833 歯科診療所
- 8331 歯科診療所
- 834 助産・看護業
- 8341 助産所
- 8342 看護業
- 835 療術業
- 8351 あん摩マッサージ指圧師・はり師・きゅう師・柔道整復師の施術所
- 8359 その他の療術業
- 836 医療に附帯するサービス業
- 8361 歯科技工所
- 8369 その他の医療に附帯するサービス業
中分類 84 保健衛生
- 840 管理,補助的経済活動を行う事業所(84保健衛生)
- 8400 主として管理事務を行う本社等
- 8409 その他の管理,補助的経済活動を行う事業所
- 841 保健所
- 8411 保健所
- 842 健康相談施設
- 8421 結核健康相談施設
- 8422 精神保健相談施設
- 8423 母子健康相談施設
- 8429 その他の健康相談施設
- 849 その他の保健衛生
- 8491 検疫所(動物検疫所,植物防疫所を除く)
- 8492 検査業
- 8493 消毒業
- 8499 他に分類されない保健衛生
中分類 85 社会保険・社会福祉・介護事業
8599 他に分類されない社会保険・社会福祉・介護事業
850 管理,補助的経済活動を行う事業所(85社会保険・社会福祉・介護事業)
8500 主として管理事務を行う本社等
8509 その他の管理,補助的経済活動を行う事業所
851 社会保険事業団体
8511 社会保険事業団体
852 福祉事務所
8521 福祉事務所
853 児童福祉事業
8531 保育所
8539 その他の児童福祉事業
854 老人福祉・介護事業
8541 特別養護老人ホーム
8542 介護老人保健施設
8543 通所・短期入所介護事業
8544 訪問介護事業
8545 認知症老人グループホーム
8546 有料老人ホーム
8549 その他の老人福祉・介護事業
855 障害者福祉事業
8551 居住支援事業
8559 その他の障害者福祉事業
859 その他の社会保険・社会福祉・介護事業
8591 更生保護事業
医療,福祉を代表する企業

日本には医療・福祉分野で革新的な技術やサービスを提供している先進的な企業が存在します。
医療
徳洲会
全国47都道府県にわたり約70の病院を運営する日本最大級の医療グループです。地方や離島、過疎地を含むあらゆる地域で医療を提供し続けています。また、海外にも医療施設を展開しており、国際的な医療支援活動にも積極的に取り組んでいます。

一般社団法人徳洲会
全国に73病院をはじめ300以上の施設を展開する徳洲会グルー
プの本部機能を有する企業です。医療機器、医薬品の販売・病院等
の経営指導・病院での給食サービス・売店の経営を行っています
済生会
済生会(さいせいかい)は、全国に約80の病院と500以上の福祉施設を持つ日本最大級の医療福祉法人です。公的医療機関として、地域医療の充実や災害時の医療支援などにも取り組んでおり、日本の医療福祉分野で重要な役割を果たしています。

社会福祉法人恩賜財団済生会
医療(総合病院)
福祉サービスを支える企業
ツクイ
日本全国に介護サービスを提供している大手企業であり、訪問介護、デイサービス、ショートステイ、住宅型有料老人ホームなど、多岐にわたる事業を展開しています。

株式会社ツクイ
デイサービス 在宅介護サービス(訪問介護・訪問入浴・訪問看護・居宅介護支援) 居住系介護サービス(有料老人ホーム・サービス付き高齢者向け住宅・グループホーム)
ニチイ学館
介護サービスや保育事業を手掛け、全国規模で介護施設や訪問介護サービスを展開しています。人材育成にも力を入れており、多くの介護福祉士を輩出しています。

株式会社ニチイ学館
【医療関連事業】 医療機関・調剤薬局における医事業務の受託、医療事務スタッフの派遣サービス、医事コンサルティング、医療事務講座の提供等。 【介護事業】 介護保険等、制度下における在宅系介護サービス、居住系介護サービス、福祉用具の販売・レンタル、障がい福祉サービス、介護職員の派遣サービス、介護職員養成講座、ヘルスケア商品等の提供。 【ヘルスケア事業】 家事代行サービスの提供等。 【教育事業】 株式会社GABAにおける英会話スクールの運営。 【保育事業】 直営保育所、企業主導型保育所、病院内・企業内保育所等の運営。 【セラピー事業】 ドッグサロン・ドッグホテルの運営、希少犬種「オーストラリアン・ラブラドゥードル」のブリーディング・販売。 【グローバル事業】 中国における介護人材の養成、介護施設の運営等。
SOMPOホールディングス
保険事業を中核に、介護やヘルスケア、リスクマネジメントなど幅広い領域で独創的なサービスを展開する企業です。

SOMPOホールディングス株式会社
セントケア・ホールディング株式会社
介護を中心とした福祉サービスを提供し、生活支援の多様なニーズに応え、専門性と先進的なアプローチを活用しながら、個々の幸福と自立を重視したサービスを展開しています。

セントケア・ホールディング株式会社
医療,福祉の規模

医療・福祉分野は、老若男女を問わず、誰もが利用するサービスで、特に高齢化が進展する日本経済においては、益々大きな割合を占めると予想され、国内においては数少ない成長産業と目されています。
約850万人の雇用を支えており、全産業の中で最大規模の労働人口を抱えています。
市場規模は約44兆円で、高齢化や医療の高度化(高額化)により、今後もさらなる拡大が見込まれています。
特に介護分野では、団塊世代が75歳以上となる「2025年問題」を見据え、施設や在宅ケアの需要増が見込まれています。
また、政府は医療費抑制の観点から、病院中心の医療から地域包括ケアシステムへの転換を進めているため、在宅医療や介護サービスへの需要シフトが予測されています。
医療・福祉分野に従事する人数の全体像
医療・福祉分野に従事する人数は約850万人に達しており、日本の全就業者数の約13%を占めています。
これは、他の産業と比べても非常に大きな割合で、比較的女性が多いのも特徴になっています。
高齢化が進む中で、今後も従事者が増えていくと考えられる分野ですが、慢性的な人材不足である点も見逃せないでしょう。
職種別の従事者数
医療・福祉分野にはさまざまな職種が含まれており、それぞれの職種で求められる専門性やスキルが異なります。
医療従事者
- 医師:約34万人
医師数は年々増加傾向にありますが、地域によって偏在が見られ、特に地方では医師不足が深刻化しています。近年は稼ぎやすい美容整形に人材が流出する傾向にあります。 - 看護師:約180万人
看護師の総数は増加しており、特に訪問看護や在宅医療分野での活躍が目立っています。結婚や出産で退職した人材の活用が社会的課題になっています。 - 歯科医師:約10万人
歯科治療や口腔ケアを担当する歯科医師は、予防医療の観点からも重要な役割を果たしています。ただし、歯科数はコンビニよりも多いといわれており、競争は激化しています。
福祉従事者
- 介護職員:約220万人
高齢者人口の増加に伴い、介護職員の需要は年々増加していますが、賃金や労働環境の課題もあり、慢性的な人材不足が続いています。 - 社会福祉士:約25万人
地域福祉や高齢者福祉、障害者福祉の分野で活躍する専門職として需要が高まっています。 - 保育士:約46万人
子育て支援の充実や待機児童問題の解消に向けて、保育士の役割が非常に重要視されています。
医療・福祉分野の特徴的な雇用傾向
女性の活躍
医療・福祉分野は、女性の就業比率が非常に高い産業で、医療・福祉分野で働く人の約70%が女性であり、看護師、介護職員、保育士などで特に顕著です。働きやすい職場環境やキャリアプランのサポートなど、女性支援策が非常に重要とされています。
高齢者の再雇用
医療・福祉分野は、他の産業に比べて高齢者の雇用割合が高いのも特徴で、特に介護分野では定年退職後に再就職する人も多く、地域社会に貢献する場として注目されています。
雇用の安定性
医療・福祉分野は、景気の変動に左右されにくい産業であるため、比較的安定した雇用を提供しています。コロナ禍のような危機的状況でも需要は落ちず、むしろ増加する傾向です。
賃金
医療分野(特に医師)は専門性の高さから比較的高水準ですが、福祉分野(特に介護職)は、人材不足や業務負担の大きさにもかかわらず、賃金水準が低い傾向にあります。特に大規模法人と小規模法人間での賃金格差が拡大傾向にあるため、この改善は急務ですが、政府による処遇改善加算の拡充など、賃上げに向けた取り組みが進められているのも事実です。
地域別の分布
医療・福祉従事者の数には地域ごとの偏りがあります。
都市部では多くの医療機関や福祉施設が集中しているため、従事者も多い一方で、地方や過疎地域では医療従事者や介護職員の不足が深刻になっており、施設の継続が困難になるケースも散見されます。
政府や自治体は地域医療の充実や人材派遣、リモート医療の導入を進め、地域格差の均衡を目指してます。
今後の展望と課題
人材需要の増加
日本では、団塊の世代が75歳以上となる「2025年問題」を迎え、高齢者人口のさらなる増加が予測されるため、医療・福祉分野の人材需要は引き続き高まると考えられます。海外人材の受け入れなど、社会全体のコンセンサスが重要になってきそうです。
働き方改革と待遇改善
介護職員や看護師の労働環境の改善や賃金アップは重要な社会課題です。慢性的な人手不足が長時間労働や業務負荷増大を引き起こしているため、政府や業界全体による根本的な取り組みが求められていますが、なかなか妙案は見つからない状況です。
テクノロジーの活用
ICTやAI、ロボット技術を活用した効率化が進展し、医療・福祉従事者の負担軽減や業務効率化が期待されています。手術支援ロボット、リハビリ支援ロボット、移乗支援ロボット、排泄支援ロボット、見守りロボット、コミュニケーションロボットなどの実用化で、人的負担の軽減が期待されています。
まとめ
医療と福祉は、国民の健康とQOLを担保する仕事で、社会の安定に寄与しています。
日本社会の高齢化に伴い、重要性を増し続けている分野で、高度な専門性や倫理観が求められる厳しい世界でもあります。
医療と福祉への信頼感があるからこそ、国民は安心して生活できているといっても決して間違いではないはずですが、一方で、医療費の増加、青天井の保険料、人材不足、地域間格差など、多くの課題も存在しています。
日本を代表する医療法人やツクイやニチイ学館などの福祉サービス事業者が、この問題解決に取り組んでいますが、保険料の配分を含め、政府や自治体の意向に大きく左右されるため、課題山積の状態で、先行きは不透明です。
持続可能な制度実現には、政府、民間、地域コミュニティが同一方向を見て、国民が一体となって課題と向き合わなければいけないでしょう。
また、金銭負担などの痛みも受け入れなければいけなくなります。
それほどに根深い問題が確実に横たわっています。
医療と福祉は、単なる日本経済の一部ではなく、また機械的な処理だけで対応できる仕事ではありません。
一個人の尊厳を守る倫理的な仕事であり、社会全体の基盤を支える重要な存在だと改めて認識する必要があるでしょう。
厚生労働省
日本医学会
日本病院会
全日本病院協会
全国自治体病院協議会
日本医療法人協会
日本放射線専門医会・医会
日本放射線技師会
日本医師会
日本精神科病院協会
全国老人保健施設協会
日本慢性期医療協会
日本社会医療法人協議会
日本看護協会
訪問看護支援協会
日本専門医機構
日本医療機能評価機構
Minds(医療情報サービス)
日本医療事業協同組合
日本病院薬剤師会
日本診療情報管理士協会
日本病院管理学会
医療研修推進財団
医療経済研究・社会保険福祉協会
医療関連サービス振興会
医療関連サービスNAVI
医療情報システム開発センター
介護労働安定センター
シルバーサービス振興会
全国有料老人ホーム協会
全国老人クラブ連合会
全国老人福祉施設協議会
全国老人保健施設協会
さわやか福祉財団
長寿社会開発センター
認知症介護研究・研修センター
認知症の人と家族の会
高齢社会をよくする女性の会
日本社会福祉士会
日本介護福祉士会
日本精神保健福祉士協会
日本ソーシャルワーカー協会
日本医療ソーシャルワーカー協会
日本栄養士会
日本理学療法士協会
日本作業療法士協会
日本介護支援専門員協会
日本社会福祉学会
日本地域福祉学会
日本福祉教育・ボランティア学習学会
日本保育学会
福祉法人経営学会
日本ケアマネジメント学会
日本リハビリテーション医学会