情報通信機械器具製造業の特色や代表する企業

情報通信機械器具製造業は、日本標準産業分類では「中分類30:情報通信機械器具製造業」に分類され、パソコン、スマートフォンなどの通信機器、ビデオ、デジカメ、ルーター、サーバー、放送機器などを製造する産業で、情報技術(IT)の発展により、マーケットを拡大させています。

  • コンピューター関連機器(パソコン、サーバー、ストレージ装置など)
  • 通信機器(スマートフォン、ルーター、基地局、光通信機器など)
  • 放送機器(カメラ、マイク、映像送信装置など)

情報通信機械器具製造業は、一昔前まで日本企業が世界を席巻し、向かうところ敵なし状態でしたが、現在では韓国や中国メーカーに押され、見る影もありません。

5G通信、AI技術の発展、クラウドコンピューティングの普及に国内電機メーカーはついていけませんでした。

しかし、テクノロジーは急速に進化するため、激しくプレーヤーが入れ替わる業界でもあります。

日本企業の巻き返しが期待されます。

情報通信機械器具製造業の特色

高度な技術力と品質管理

情報通信機械器具製造業の最大の特徴は、微細な技術力から生み出される製品の精密性です。

日本企業は戦後80年の技術革新の集積により、今でも世界トップクラスの技術力を維持しています。

パソコンや通信機器は長時間の安定した動作が求められ、信頼性の高さが競争力の源泉となっています。

海外メーカーの廉価品に押され気味ですが、技術力自体ではまだまだ負けていません。

日本メーカーは国際市場でも高い評価を受けています。

研究開発への積極投資

情報通信機械器具製造業では、継続的な研究開発(R&D)のための投資が不可欠ですが、バブル崩壊により、日本企業はこれが維持できず、表舞台から去らざるを得なくなりました。

特に通信技術は進化が早く、競争が激化しているため、メーカーは新しい製品の開発に多額の投資を行っています。

スマートフォンや通信機器の分野では5Gの次の6Gを見据えた製品開発が急務となっており、新技術の実用化を目指します。

また、日本企業は自動運転に代表される、AIやIoT(モノのインターネット)などの分野にも積極的に取り組んでおり、情報通信技術と製造業の融合が加速しています。

ソニーとホンダの協業による自動車づくりはその象徴かもしれません。

これにより、業界を横断するスマートファクトリー化が進み、生産効率の向上やコスト削減が計画されています。

グローバル市場への依存度

情報通信機械器具はボーダーレスで世界的な需要が高く、多くの日本企業が海外市場での競争を繰り広げていますが、総じて劣勢です。

以前はパソコンやスマートフォンを製造していたメーカーも事業縮小や撤退を選択し、電子部品製造などに軸足を移す戦略をとる傾向にあります。

そして、製造コスト削減を狙い、生産拠点を海外に移す動きも活発で、アジア圏を中心に生産拠点を構える企業が増え、グローバルサプライチェーンの構築が進んでいます。

ただし、コロナ禍で明らかになった通り、地政学リスクや半導体不足などの影響を受けやすい点も、この業界の特徴になっています。

産業分類における情報通信機械器具製造業

情報通信機械器具製造業は、日本標準産業分類(JSIC)の「中分類30」に該当し、コンピューターやスマートフォン、通信機器、放送機器などを製造する分野です。

情報通信技術(ICT)の発展に伴い、社会のデジタル化を支える重要な産業となっています。

小分類と細分類

  • 300  管理,補助的経済活動を行う事業所(30情報通信機械器具製造業)
    • 3000  主として管理事務を行う本社等
    • 3009  その他の管理,補助的経済活動を行う事業所
  • 301  通信機械器具・同関連機械器具製造業
    • 3011  有線通信機械器具製造業
    • 3012  携帯電話機・PHS電話機製造業
    • 3013  無線通信機械器具製造業
    • 3014  ラジオ受信機・テレビジョン受信機製造業
    • 3015  交通信号保安装置製造業
    • 3019  その他の通信機械器具・同関連機械器具製造業
  • 302  映像・音響機械器具製造業
    • 3021  ビデオ機器製造業
    • 3022  デジタルカメラ製造業
    • 3023  電気音響機械器具製造業
  • 303  電子計算機・同附属装置製造業
    • 3031  電子計算機製造業(パーソナルコンピュータを除く)
    • 3032  パーソナルコンピュータ製造業
    • 3033  外部記憶装置製造業
    • 3034  印刷装置製造業
    • 3035  表示装置製造業
    • 3039  その他の附属装置製造業

情報通信機械器具製造業を代表する企業

日本電気(NEC)

日本を代表する総合電機メーカーのひとつで、情報通信機器の開発・製造を手掛けています。

ネットワークインフラやスーパーコンピューター分野で高い実績を誇り、国内外の通信事業者や政府機関向けに高度なソリューションを提供しています。

最近では、通信技術の開発にも力を入れており、国内の通信インフラ整備に貢献しています。

日本電気株式会社

パブリック事業、エンタープライズ事業、ネットワークサービス事業、システムプラットフォーム事業

富士通

ITサービスとハードウェアの両方を提供し、サーバーやストレージ、ネットワーク機器などの開発を行っています。

スーパーコンピューター「富岳」は世界的にも高い評価を受けており、科学技術計算やAIの研究に活用されています。

クラウドサービス事業にも注力しており、デジタルトランスフォーメーション(DX)の推進に貢献しています。

富士通株式会社

通信システム、情報処理システムおよび電子デバイスの製造・販売ならびにこれらに関するサービスの提供

ソニー

情報通信機器だけでなく、エンターテインメントや半導体分野でも強みを持つ企業で、スマートフォン向けのイメージセンサー市場では世界トップシェアを誇り、通信技術を活用したカメラやセンシング技術の開発にも取り組んでいます。

5G対応製品やAI技術を活用した新規事業の展開も積極的に進めています。

ソニー株式会社

京セラ

通信機器や電子部品の製造を手掛ける企業で、携帯電話端末や基地局機器などの分野で実績があります。

近年は、IoT向けデバイスや5G関連製品の開発を強化し、次世代通信技術の進化に対応しています。

太陽光発電や蓄電池事業にも参入しており、持続可能なエネルギーソリューションの提供にも力を入れています。

京セラ株式会社

ファインセラミック部品、半導体部品、電子部品、切削工具、ソーラー発電システム、宝飾品、セラミック日用品、通信機器などの製造・販売

情報通信機械器具製造業の規模

産業規模

日本の情報通信機械器具製造業の市場規模は約10兆円規模とされ、製造業全体の中で重要な位置を占め、特にネットワーク化が進む近未来を見据え、通信インフラ関連市場は拡大に疑いの余地はなく、今後も間違いなく成長が期待できます。

国内の企業数は約2,000社とされ、大手企業だけでなく、中小企業やスタートアップ企業も独自技術やデザイン性、または低価格などをウリにポジションを獲得しています。

特に、特殊技術を持つ中小・ベンチャー企業は、大手メーカーへのOEM、または部品供給を通じ、サプライチェーンで不可欠な役割を果たしており、日本の製造業の競争力を下支えています。

今後の展望

情報通信機械器具製造業は、すべてがネットワーク化される社会の実現に向け、間違いなく成長する分野です。

デジタルトランスフォーメーション(DX)、次世代通信技術、AI化、量子コンピュータなどの普及には、必ず情報通信機械器具製造業の技術が伴うため、国家的規模で技術開発が進んでいくと思われます。

より高度な通信機器や半導体技術の開発で、完全自動運転を含む、省力化(機械化)の覇権が決まるため、今後、世界的に最もアツい業界になでしょう。

特に、アメリカをはじめとする西側と中国との争いが注目されます。

一方で、希土類などの資源確保や環境配慮といった課題もあり、企業に求められる持続可能な開発が足かせになる可能性もあります。

日本が蓄積してきた技術力を結集し、世界市場でも競争力を維持しなければいけません。

まとめ

情報通信機械器具製造業は、デジタルトランスフォーメーション(DX)の加速や次世代通信技術の普及に伴い、今後も業界全体が成長していくことが予想されます。

今後の激変する社会に上手く対応できれば、停滞する日本全体の突破役になると期待できます。

かつては栄華を誇った日本企業の多くは没落しましたが、NEC、富士通、ソニーなどの大手企業は形を変えながら市場をリードし、その一方で中小企業も独自の技術で競争力を発揮しています。

しかし、中国企業の成長は著しく、グローバル市場の競争が激化する中で、日本企業はさらなる技術革新や生産効率の向上が実現できなければ、消える運命かもしれません。

また、地政学リスクやレアアースの原材料不足といった課題にも対応しながら、持続可能な成長を実現する必要があります。

少子高齢化解決のひとつの答えが、情報通信機械器具製造業の進展ではないかと思われます。

技術で社会問題を解決できれば、未来は決して暗くないでしょう。

日本の情報通信機械器具製造業が世界市場でどのように発展していくのか、注目されるところです。