食料品製造業の特色や代表する企業|海外市場に挑戦中

食料品製造業は、日常生活に欠かせない食品や飲料を生産する産業であり、その範囲は多岐にわたります。

肉、魚、野菜、調味料、穀物、パン、お菓子、油、冷凍食品など、口に入るあらゆるものの製造が食料品製造業に含まれます。

食料品製造業の定義や特徴、産業分類における位置づけ、そして日本を代表する企業について詳しく解説します。

食料品製造業とは

食料品製造業とは、農産物や水産物、畜産物などの原材料を加工し、食品や飲料を製造する産業を指します。

食料品製造業は、食生活を支える重要な役割を果たしており、決して欠くことができません。

具体的には、以下のような製品が対象になりますが、これらの製品は、消費者の多様なニーズに応えるため、日々進化を遂げています。

畜産食料品

肉製品や乳製品など。具体的には、部分肉・冷凍肉製造、肉加工品製造、処理牛乳・乳飲料製造、乳製品製造、その他の畜産食料品製造が含まれます。

水産食料品

魚介類の加工品。具体的には、水産缶詰・瓶詰製造、海藻加工、水産練製品製造、塩干・塩蔵品製造、冷凍水産物製造、冷凍水産食品製造、その他の水産食料品製造が含まれます。

農産保存食料品

野菜や果実の缶詰、乾燥食品など。具体的には、野菜缶詰・果実缶詰・農産保存食料品製造、野菜漬物製造が含まれます。

その他の食料品

納豆、こんにゃく、もち、でんぷん製造、めん類製造、豆腐・油揚製造、あん類製造、冷凍調理食品製造、そう(惣)菜製造、すし・弁当・調理パン製造、レトルト食品製造などが含まれます。

食料品製造業の特色

食料品製造業の主な特徴は以下の通りです。

多様な製品ラインナップ

日常的な食材から高級品、健康志向の商品まで、老若男女に合わせた多岐にわたる製品を提供しています。

また、生活スタイルの変化に合わせた商品なども積極的に開発し、複雑化するニーズにも素早く対応しています。

この多様性の確保により、消費者の幅広いニーズにきめ細かく満たしていきます。

高度な品質管理

日本は安心・安全への期待が高いため、食品の安全性を確保するための厳格な品質管理が求められます。

HACCP(危害分析重要管理点)やISO認証などの国際基準に準拠した管理体制を整備している企業も多く存在します。

技術革新と効率化

生産効率の向上や新製品の開発のため、最新技術や設備を導入する企業が増えています。

続々と開発される、鮮度を落とさず、美味しさも維持するような新技術は努力の賜物といえるでしょう。

これにより、コスト削減や製品の付加価値向上が図られ、顧客満足度を高めています。

環境への配慮

持続可能な社会の実現に向け、環境負荷の低減やエコフレンドリーな製品の開発に取り組む企業も増加しています。

包装材の削減や再生可能エネルギーの活用、効率的な輸送網の構築などが挙げられます。

産業分類における食料品製造業

日本標準産業分類では、食料品製造業は大分類「E 製造業」、中分類「09 食料品製造業」に位置づけられています。

さらに、小分類は以下のように細分化され、各事業所の主な製造品目や業務内容が明確化されています。

  • 090管理、補助的経済活動を行う事業所
  • 091畜産食料品製造業
  • 092水産食料品製造業
  • 093野菜缶詰・果実缶詰・農産保存食料品製造業
  • 094調味料製造業
  • 095砂糖・でんぷん糖類製造業
  • 096精穀・製粉業
  • 097パン・菓子製造業
  • 098動植物油脂製造業
  • 099その他の食料品製造業

食料品製造業の規模

食料品製造業は日常生活に密接に関わる産業であり、国内外において重要な経済活動の一翼を担っています。

具体的なデータや特徴を基に、食料品製造業の規模について解説します。

国内市場規模

日本の食料品製造業の市場規模は約50兆円以上とされており、製造業全体の中でも大きなシェアを占めています。

人は必ず食事をするので、景気に左右されにくく、安定した売上が見込める点が、嗜好品との違いです。

食品の多様性や消費者ニーズに応じた新商品の開発により、業界は堅調に推移しています。

主要な市場構成

  • 飲料・酒類:ビール、清涼飲料水、機能性飲料など。
  • 加工食品:レトルト食品、冷凍食品、菓子、調味料。
  • 健康食品:サプリメント、特定保健用食品(トクホ)。

国内のトレンド

  • 高齢化社会を背景に低塩分食品や健康志向の商品が注目されています。
  • 家庭内調理の簡略化を目的としたミールキットや時短食品の需要が増加しています。

雇用規模

食料品製造業は、製造業全体の雇用を大きく支えています。

総務省の労働力調査によると、食料品製造業の従業員数は約100万人以上(パート・アルバイトを含む)にのぼり、製造業の中でも雇用規模が大きい産業のひとつになっています。

雇用の特徴

  • 地方都市を中心に工場が多く、地域経済を支える主要産業となっています。
  • 女性や高齢者、外国人労働者が多く活躍している点が特徴的です。

雇用における課題

  • 人手不足への対応が課題となっており、製造ラインの自動化や外国人技能実習生の活用が進められています。

生産量と輸出入規模

国内生産量

日本の食料品製造業は、国内需要をほぼ満たす規模で生産されています。

特に農産加工品(果物・野菜の缶詰など)や菓子類、飲料は生産量の多い分野です。

輸出

  • 食料品製造業の輸出額は、2022年には約1兆円を突破しています。
  • 和食ブームの影響で、しょうゆ、みそ、酢、日本酒などの伝統食品の輸出が拡大しています。
  • アジア市場(特に中国や東南アジア)が主要な輸出先です。

輸入

  • 小麦、大豆、コーヒー豆などは輸入依存度が高く、多くの原材料を海外から調達しています。
  • 消費者の多様な嗜好に対応するため、海外の加工食品の輸入も増加しています。

地域別の特徴

主要な産地と工場立地

  • 北海道や東北地方: 農畜産物の豊富な供給を背景に乳製品や冷凍食品の工場が集中しています。
  • 関東・中部地方: 大規模工場や流通拠点が多く、パンや菓子類の製造が盛んです。
  • 関西・九州地方: 醤油や味噌、焼酎など、伝統的な加工食品の生産が強みです。

地域経済への貢献

地域特産品を活用した地産地消の取り組みが広がり、観光産業との連携が進んでいます。

経済全体への影響

日本のGDPにおいて約6%を占める重要な産業で、食品流通や飲食サービス業との連携で、さらに広範な経済活動を支えています。

  • 関連産業: 農業・水産業、物流業、包装材業界、広告業など。
  • 波及効果: 食料品製造業の成長は、消費者支出を直接的に押し上げ、地域経済の活性化につながります。

日本を代表する食料品製造企業

日本には、世界的に知られる食料品製造企業が多数存在します。

以下に、代表的な企業を紹介します。

味の素株式会社

調味料や加工食品、飲料など幅広い製品を展開する総合食品メーカーです。

グローバルに事業を展開し、アミノ酸技術を基盤とした製品開発で知られています。

味の素株式会社

食品、アミノ酸製品の製造、販売

山崎製パン株式会社

山崎製パンは、日本最大の製パン企業で、パンや和洋菓子、調理パンなど多彩な製品を製造・販売しています。

全国に製造拠点を持ち、災害時の積極的な食料支援でも知られています。

パン・和洋菓子の製造及び販売

サントリーホールディングス株式会社

サントリーは、飲料・食品事業を中心に、アルコール飲料や清涼飲料水、健康食品などを手掛ける大手企業です。

広告宣伝に長けており、莫大な広告費投下でハイボールを流行らせたことでも有名です。

環境保全活動や文化振興にも積極的に取り組んでいます。

サントリーホールディングス株式会社

酒類・飲料の製造および酒類・健康食品の販売を中心として企業グループの管理・運営(純粋持株会社)

株式会社Mizkan

酢やつゆ、鍋つゆなどの調味料を中心に製造・販売する企業です。

1804年創業の歴史を持ち、伝統と革新を融合させた製品展開が特徴です。

株式会社Mizkan

日本+アジアにおける家庭用/業務用 調味料・加工食品、納豆の企画開発・販売

井村屋グループ株式会社

井村屋は、和菓子や冷菓、調理食品などを製造・販売する企業で、特に「あずきバー」などの製品で知られています。

地域密着型の経営と品質へのこだわりが強みです。

井村屋グループ株式会社

グループ経営の立案、資産の維持管理、投資活動

食料品製造業の課題と展望

人手不足への対応

食料品製造業では、生産現場での人手不足が深刻な課題になっています。

少子高齢化の影響もあり、特に地方工場での労働力確保が困難になっています。

この問題に対して、多くの企業が以下のような施策を講じています。

自動化とロボットの導入

製造ラインの自動化やAI技術を活用したロボットの導入により、効率化と省力化を図っています。

外国人労働者の活用

技能実習制度や特定技能ビザを活用し、海外からの労働力を積極的に受け入れています。

食の安全と信頼性確保

消費者が食品の安全性に対する関心を高めている中で、企業には透明性のある情報開示や厳格な品質管理が求められています。

トレーサビリティの強化

原材料の生産地や製造過程を消費者が確認できるシステムを導入する企業が増加しています。

認証の取得

食品安全マネジメントシステム(ISO 22000)やFSSC 22000などの国際認証を取得し、信頼性をアピールする動きが広がっています。

環境問題への取り組み

地球温暖化や資源枯渇といった環境問題に対する関心が高まる中、食料品製造業にも環境負荷の低減が求められています。

サステナブルな原材料の調達

環境に配慮した農産物や水産物の使用を推進する企業が増えています。

廃棄物削減

食品ロスを削減するための取り組みやリサイクル可能な包装材の使用が進んでいます。

グローバル展開と競争

国内市場の縮小に伴い、海外市場での競争力強化が重要な経営課題になっています。

現地化戦略

各国の食文化や嗜好に合わせた製品を開発し、現地市場でのシェア拡大を目指す企業が増加しています。

ブランドの国際化

日本の伝統的な食品や健康志向の製品を武器に、海外でのブランド認知度向上を図っています。

食料品製造業が社会に与える影響

地域経済への貢献

食料品製造業は、地方都市を中心に地域経済の重要な一端を担っています。

地元産の原材料を活用することで農業や漁業を支援し、地域雇用を創出しています。

食文化の継承と発展

日本の伝統的な食文化を次世代に継承する役割も担っています。

納豆や味噌、和菓子といった食品は、食料品製造業の技術を通じて現代でも親しまれています。

健康への寄与

近年の健康志向の高まりを受け、低糖質や高タンパク質、機能性食品などの開発が進められています。

これにより、消費者の健康維持や生活の質の向上に貢献し、日本を長寿国にしているといっても過言ではないでしょう。

まとめ

食料品製造業は、国民の食を賄うだけでなく、日本の食文化と社会経済においても欠かせない産業になっています。

消費者ニーズに応じた多様な製品を提供しつつ、環境への配慮や技術革新を通じて成長を続けているのです。

労働力不足や環境問題、グローバル競争が今後の課題に挙げられますが、これらを克服するために業界全体だけではなく、国や国民の協力が求められるでしょう。