繊維工業の特色や代表する企業について徹底解説

繊維工業は、衣服を中心に生活必需品を生み出す国内重要産業のひとつです。

その多様性と影響力の大きさが特徴で、人々の暮らしを支え、経済の発展を牽引してきた「基幹産業」としての地位を確立しています。

衣服はもちろん、インテリア(カーテン、カーペット)、産業用繊維(自動車、建築、医療用製品)、さらには航空宇宙分野で使用される高性能素材に至るまで、繊維製品は多くの産業を陰から支えています。

繊維工業は単に「衣類を作る産業」ではなく、原料の調達から素材製造、製品の加工、販売までを含む広範なサプライチェーンを持っているため、技術革新(外部環境)の影響を強く受ける分野でもあります。

繊維工業の概要や特色、業界を代表する企業、経済規模について深掘りし、現代社会における繊維工業の重要性を解説します。

繊維工業とは

繊維工業の定義

繊維工業とは、主に天然繊維や化学繊維を原料として、生地や衣類などの製品を生産する産業を指し、「紡績」「製織」「染色加工」「縫製」などの複数工程を経て製品を完成させます。

繊維工業は衣料品だけに留まらず、産業資材や医療用繊維など、広範囲に及ぶ製品を製造してます。

産業分類における繊維工業

日本標準産業分類において、繊維工業は「製造業」に属し、さらに以下のように細分化されています。

中分類 11  繊維工業

110  管理,補助的経済活動を行う事業所
  • 1100  主として管理事務を行う本社等
  • 1109  その他の管理,補助的経済活動を行う事業所
111  製糸業,紡績業,化学繊維・ねん糸等製造業
  • 1111  製糸業
  • 1112  化学繊維製造業
  • 1113  炭素繊維製造業
  • 1114  綿紡績業
  • 1115  化学繊維紡績業
  • 1116  毛紡績業
  • 1117  ねん糸製造業(かさ高加工糸を除く)
  • 1118  かさ高加工糸製造業
  • 1119  その他の紡績業
112  織物業
  • 1121  綿・スフ織物業
  • 1122  絹・人絹織物業
  • 1123  毛織物業
  • 1124  麻織物業
  • 1125  細幅織物業
  • 1129  その他の織物業
113  ニット生地製造業
  • 1131  丸編ニット生地製造業
  • 1132  たて編ニット生地製造業
  • 1133  横編ニット生地製造業
114  染色整理業
  • 1141  綿・スフ・麻織物機械染色業
  • 1142  絹・人絹織物機械染色業
  • 1143  毛織物機械染色整理業
  • 1144  織物整理業
  • 1145  織物手加工染色整理業
  • 1146  綿状繊維・糸染色整理業
  • 1147  ニット・レース染色整理業
  • 1148  繊維雑品染色整理業
115  綱・網・レース・繊維粗製品製造業
  • 1151  綱製造業
  • 1152  漁網製造業
  • 1153  網地製造業(漁網を除く)
  • 1154  レース製造業
  • 1155  組ひも製造業
  • 1156  整毛業
  • 1157  フェルト・不織布製造業
  • 1158  上塗りした織物・防水した織物製造業
  • 1159  その他の繊維粗製品製造業
116  外衣・シャツ製造業(和式を除く)
  • 1161  織物製成人男子・少年服製造業(不織布製及びレース製を含む)
  • 1162  織物製成人女子・少女服製造業(不織布製及びレース製を含む)
  • 1163  織物製乳幼児服製造業(不織布製及びレース製を含む)
  • 1164  織物製シャツ製造業(不織布製及びレース製を含み、下着を除く)
  • 1165  織物製事務用・作業用・衛生用・スポーツ用衣服・学校服製造業(不織布製及びレース製を含む)
  • 1166  ニット製外衣製造業(アウターシャツ類,セーター類などを除く)
  • 1167  ニット製アウターシャツ類製造業
  • 1168  セーター類製造業
  • 1169  その他の外衣・シャツ製造業
117  下着類製造業
  • 1171  織物製下着製造業
  • 1172  ニット製下着製造業
  • 1173  織物製・ニット製寝着類製造業
  • 1174  補整着製造業
118  和装製品・その他の衣服・繊維製身の回り品製造業
  • 1181  和装製品製造業(足袋を含む)
  • 1182  ネクタイ製造業
  • 1183  スカーフ・マフラー・ハンカチーフ製造業
  • 1184  靴下製造業
  • 1185  手袋製造業
  • 1186  帽子製造業(帽体を含む)
  • 1189  他に分類されない衣服・繊維製身の回り品製造業
119  その他の繊維製品製造業
  • 1191  寝具製造業
  • 1192  毛布製造業
  • 1193  じゅうたん・その他の繊維製床敷物製造業
  • 1194  帆布製品製造業
  • 1195  繊維製袋製造業
  • 1196  刺しゅう業
  • 1197  タオル製造業
  • 1198  繊維製衛生材料製造業
  • 1199  他に分類されない繊維製品製造業

繊維工業の歴史

近代の繊維工業は、18世紀後半から19世紀にかけての産業革命時代、機械化の進展で急速に発展しました。

特に、イギリスでは「紡績機械」や「織機」の発明により、綿工業が経済の柱となり、近代繊維工業の基盤を築き、中心地であったマンチェスターは「世界の工場」と呼ばれるまでになりました。

日本においては、豊田佐吉の自動織機が有名で、その技術を応用し、自動車産業に参入した歴史は伝説レベルで語られています。

その後、レーヨン、ナイロン、ポリエステルなどの化学繊維の開発により、耐久性や機能性に優れた製品が大量生産可能となり、20世紀にはさらなる拡大を遂げました。

繊維工業の特色

原料の多様性

繊維工業の特徴は、原料の多様性があげられるでしょう。

原料は大きく「天然繊維」と「化学繊維」の2種類に分類されますが、化学繊維はさらに「再生繊維」「半合成繊維」「完全合成繊維」などに仕分けされます。

これら多様な原料の組み合わせにより、さまざまな機能性や用途に応じた製品が生み出されています。

天然繊維

綿、麻、羊毛、絹など。

化学繊維

レーヨン、キュプラ、アセテート、ナイロン、ポリエステル、アクリル、ポリウレタンなど。

高付加価値化の進展

近年では、ユニクロなどに代表される通り、従来の繊維製品に機能性やデザイン性を付加した高付加価値化の流れが顕著です。

ヒートテックやエアリズムは爆発的ヒット商品となり、ライバル企業も後追いで類似商品を発売し、今や市場は飽和状態です。

防水・防火機能を持つ衣料やスポーツ用の速乾性素材なども老若男女を問わず愛用され、さらには、スマートテキスタイル(ウェアラブル技術を組み込んだ繊維)や3Dプリンティング技術が新たな可能性を開いています。

環境負荷の課題

繊維工業は生産工程で大量の水やエネルギーを使用するため、環境への影響が課題とされています。

特に化学繊維の生産や染色工程における廃水問題が喫緊の課題です。

繊維工業の規模

日本における規模

日本の繊維工業の規模は、近年縮小傾向にありますが、高付加価値商品に注力し、競争力を維持しています。

国内繊維産業の出荷額は約3.7兆円とされ、事業所数は約1.3万、従業員数は約23.1万人で、全製造業のうち、6.0%の事業所数と3.0%の従業員数を占める産業です。

世界における規模

世界全体では、約1.5兆ドル規模の産業とされ、特に人件費の安いアジアが生産拠点の中心になっています。

ファストファッションの誕生で、衣服の低価格化が世界的トレンドになっているため、東南アジアなど、安い労働力が確保できる国が重宝され、主要生産国になってきています。

成長の可能性

繊維工業は、アパレル業界全体の低価格のトレンドがあるものの、新素材の開発やサステナブルな製品への需要増加により、今後も成長が期待されています。

特に、リサイクル繊維やバイオ素材のエコフレンドリーな分野は注目されています。

繊維工業を代表する企業

日本を代表する企業

東レ株式会社

繊維事業を基盤に化学素材の研究開発を行う日本を代表する大手繊維企業です。

特にカーボンファイバーやポリエステル製品で世界的なシェアを持ち、ボーイング社の航空機づくりの黒子として貢献しています。

繊維の分野では高機能素材「エクセーヌ」などが有名です。

東レ株式会社

ポリプロピレンフィルムの製造

ユニチカ株式会社

ユニチカは、衣料用繊維や産業資材の分野で強みを持つ企業です。

繊維のほか、バイオマスや環境対応型の製品開発にも注力しています。

ユニチカ株式会社

高分子、機能材、繊維、その他

クラボウ(倉敷紡績)

クラボウは、日本で最も歴史ある繊維メーカーのひとつです。

伝統的な繊維製品から、医療用繊維や機能性繊維まで幅広い事業を展開しています。

株式会社クラボウ

グンゼ株式会社

インナーウェアやストッキングを中心としたアパレル事業、プラスチックフィルムやメカトロニクスを含む機能ソリューション事業、スポーツクラブ運営などのライフクリエイト事業を展開しています。

グンゼ株式会社

・プラスチックフィルム・エンジニアリングプラスチックス・電子部品等の製造販売 ・印刷関係機械・食品関係機械の製造販売 ・メディカル材料の製造・販売 ・衣料品(インナーウエア、レッグウエア等)の製造販売 ・繊維資材(各種ミシン糸)・テキスタイル素材の製造販売

東洋紡株式会社

繊維、化成品、バイオ・メディカル、機能材などの高機能製品を開発・製造しています。

繊維業界の名門として知られ、現在は多角的な事業展開を行っています。

東洋紡株式会社

フィルム・機能樹脂、産業マテリアル、ヘルスケア、衣料繊維分野における各種製品等の製造、加工、販売。 プラント・機器の設計、制作、販売。各種技術・情報の販売。

帝人株式会社

繊維、炭素繊維、樹脂、医薬品、医療機器など多岐にわたる事業を展開しています。

高機能素材やヘルスケア分野で強みを持ち、国内外で事業を拡大しています。

帝人株式会社

総合化学会社  高機能・複合材料事業  樹脂・フィルム事業  研究開発

株式会社レナウン

婦人服、紳士服、雑貨の企画・製造・販売を行っています。

「アクアスキュータム」や「ダーバン」などのブランドを展開、品質とデザインを重視し、持続可能なファッションの提供に注力しています。

株式会社レナウン

セーレン株式会社

繊維技術を基盤に多彩な事業を展開しています。

自動車内装材や高機能素材、医療・環境資材などを製造し、国内外で事業を拡大しています。

セーレン株式会社

各種繊維製品の染色加工。各種繊維製品の企画製造販売。
各種化学工業品の製造販売。
各種産業機器の製造販売。電子部品の企画製造販売。

繊維工業の未来

直面する課題

繊維工業は必ずしも順風満帆でなく、多くの課題にも直面しています。

その筆頭が、環境負荷の軽減と労働力不足(人材の確保)です。

環境負荷の軽減

繊維製品の生産プロセスでは大量の水やエネルギーが使用され、染色工程では環境汚染の原因となる化学物質を発生させる場面があるため、リサイクル素材や植物由来の繊維を利用した持続可能な生産体制の構築を社会から要請されています。

労働力不足(人材の確保)

日本国内では、繊維業界で働く人材の高齢化や後継者不足が喫緊の課題となっています。特に地方の生産現場において労働力不足は顕著で、外国人材に頼らざるを得ない状況にまで追い込まれています。

「素材」の会社が多く、比較的地味な印象を持たれてしまう繊維工業なので、次世代を担う若い技術者の関心を引きつけるためには、業界のイメージアップと教育支援が重要になると見定め、大手企業を中心にマスメディアやSNSなどを駆使して、ブランディングとイメージアップを図っています。

サステナビリティへの取り組み

環境負荷を軽減するため、繊維業界はサステナブルな取り組みを強化しています。

廃棄されたペットボトルや衣料品からリサイクルされた繊維である再生ポリエステル、植物由来の素材を原料とした化学繊維(例:トウモロコシ由来のポリ乳酸繊維)であるバイオ由来繊維、海に廃棄されたプラスチックを回収し、再利用する技術である海洋プラスチック再生繊維などが実用化されつつあります。

技術革新の進展

AIやIoTを活用したスマートテキスタイル(スマート衣料)の市場が拡大しています。

温度調整、心拍モニタリングなど、電子機器が組み込まれた繊維であるスマートテキスタイルは、寿命の伸長やQOLの向上に寄与するでしょう。

破れたり傷ついたりすると自動的に修復する繊維である自己修復繊維も持続可能な社会の実現に一役買うはずです。

その他、撥水、防汚、防菌など、機能性を向上させた繊維であるナノテクノロジーを活用した新素材などが実用化されており、医療やスポーツの分野で新たな可能性が広がっています。

化学繊維の未来と展望

環境への貢献

繊維産業は地球環境への負荷を大幅に軽減する方向に進化しています。化学繊維業界では、廃棄物の削減、炭素排出の抑制、リサイクル技術の開発が加速しています。

新興国での生産拡大

化学繊維の生産は、コストの低い中国やインド、東南アジアなどの新興国にシフトしていますが、高付加価値製品の生産は日本や欧米の技術力と生産力に依存しています。特に、日本企業は炭素繊維やナノ素材といった先端分野で世界をリードし、優位性を維持しています。

社会的責任とエシカルファッション

在庫品の大量破棄への忌避など、消費者の意識が「エシカル(倫理的)な消費」にシフトする中で、化学繊維も「環境に優しい」製品としての地位を高めなければ、エンドユーザーからそっぽを向かれてしまうかもしれません。このため、繊維業界全体でサステナブルな生産体制の確立が求められています。

まとめ

繊維工業は、日常生活に欠かせない「衣類」という基本的な需要を満たすだけでなく、産業資材、医療用製品、スポーツ用品、航空宇宙分野に至るまで、幅広い分野において横断的に重要な役割を果たしています。

歴史的に見ても、繊維工業は産業革命の起爆剤となり、多くの国々の経済発展を支える基幹産業として貢献してきました。

日本においても、明治期の絹織物産業から戦後の化学繊維の発展、そして現代の高機能素材開発へと続く進化の道のりは、国内外における繊維工業の存在感を示すものです。

繊維工業の特色と意義

繊維工業の最大の特徴は、多様性と柔軟性に集約されるかもしれません。

天然繊維と化学繊維の2つの主要なカテゴリーを持ちながら、それぞれの分野が細分化され、多様な用途にきめ細かく対応する体制が構築されています。

衣類用の一般的な素材だけでなく、機能性繊維や産業用繊維、さらには再生可能素材を活用した環境配慮型繊維まで、多岐にわたる製品が開発され、航空機製造の陰の主役として、世界でも知られるようになりました。

さらに、近年の繊維工業は単なる製品提供に留まらず、環境問題やサステナビリティへの対応、先進技術との融合(スマートテキスタイルの開発)によって、新しい価値を生み出しています。

繊維工業が人間の寿命伸長に貢献する時代はもうすぐそこにまで来ているのです。

このように、繊維工業は顧客ニーズだけでなく、社会的・経済的な役割を担うと同時に、未来に向けた課題解決に貢献する産業への昇華しています。

日本の繊維工業が持つ競争力

高付加価値製品分野での圧倒的な競争力が日本の強みで、特に、東レ、ユニチカ、クラボウなどの大手企業が主導する炭素繊維や高性能ポリエステルのような最先端技術の開発は、日本が圧倒的に世界市場をリードしています。

また、京都の西陣織や金沢の加賀友禅などの伝統的な織物技術と最新の繊維技術を融合させ、現代の需要に適応しながら進化を続けている点も日本企業の優位性を示す理由になるでしょう。

繊維工業は、衣服を通じて、人々の生活を支える基盤的な産業であると同時に、イノベーションを生み出す未来志向の分野でもあります。

その歴史と発展の背景には、多くの努力と技術革新があり、現在も炭素繊維などの分野を中心に進化が続いています。

サスティナブルな環境意識が声高に叫ばれる現代において、繊維工業が果たすべき役割はますます大きくなっていくでしょう。