
教育,学習支援業は、日本標準産業分類における「大分類O」に位置づけられ、幼稚園から大学、高等専門学校、専門学校、塾、予備校、オンライン学習サービス、自動車教習所に至るまで、幅広い教育サービスを含んでいます。
世界が絶賛する日本社会の教育水準や高いモラルは、教育,学習支援業の下支えによって実現できているといっても過言ではないでしょう。
公的な教育機関である学校教育だけでなく、民間企業による教育サービスも含まれるのが特徴で、およそ「教育」に関連する事業は、ここに分類されると考えて間違いありません。
近年では、デジタル技術の進展で、教育方法や学習環境が激変しています。
ICT(情報通信技術)を活用したオンライン教育の拡大や個別最適化学習を実現するAIの導入など、新たな学びの形が広がっています。
少子化の影響が直撃する業界なので、リスキリング(学び直し)など、新たな市場の創出が生き残りのポイントになるでしょう。
教育,学習支援業の特色

教育,学習支援業は、多様な学びの場を提供する産業として、以下のような特色を持っています。
公的機関と民間企業の両立
公的な教育機関と民間の学習支援サービスが並存する業界です。
学校教育を担う公的機関は、義務教育から高等教育といった基礎教育までを可能な限り低価格で提供しています。
学習塾や予備校、語学スクール、プログラミング教室、自動車教習所などの民間サービスは、個々のニーズに合わせたカスタマイズされた教育を提供しているため、費用は高額になります。
公的機関と民間の棲み分けにより、相互を補完し、よりセグメントされた学習を可能にしている点は日本社会の強みかもしれません。
デジタル化とテクノロジーの活用
近年、教育業界にはデジタル化の波が急速に押し寄せています。
学校教育ではICTを活用した授業が推進され、児童・生徒に端末を配布する「GIGAスクール構想」が本格化しました。
また、オンライン学習プラットフォームやeラーニングの普及により、場所や時間に縛られない新たな学習スタイルが可能となっています。
とりわけ、スマートフォンを活用した学習機会は、隙間時間を勉強に充てられ、動画で繰り返し見返せるなど、自由度と理解度が増すメリットがあります。
さらに、AIやビッグデータを活用した個別最適化学習も注目されています。
生徒の学習進度や理解度に応じた学習コンテンツを提供するシステムが広がりつつあり、これにより学習効率が大幅に向上しています。
グローバル化への対応
国際化が進む中で、グローバルな視点を持つ人材の育成が重要視され、英語や中国語などの外国語教育、海外留学支援、さらには海外進出する日本企業向けの現地語教育サービスも拡大しています。
また、外国人材受け入れに伴い、日本語学校も活況になっています。
少子化と教育ニーズの多様化
少子化の進展で、子ども一人あたりの教育費が増加しており、学習塾やプログラミング教室、スポーツ指導などの多様な教育サービスが広がりをみせています。
また、政府が打ち出しているリスキリングに伴い、社会人向けのリカレント教育(生涯教育)や資格取得のための学習支援が新たなマーケットとして注目されています。
今後は高齢者層に向けた教育プログラムの伸長が予想されます。
産業分類における教育,学習支援業

教育,学習支援業は、日本標準産業分類の「大分類O」とされ、以下のように細分化されています。
中分類 81 学校教育
- 810 管理,補助的経済活動を行う事業所(81学校教育)
- 8101 管理,補助的経済活動を行う事業所
- 811 幼稚園
- 8111 幼稚園
- 812 小学校
- 8121 小学校
- 813 中学校
- 8131 中学校
- 814 高等学校,中等教育学校
- 8141 高等学校
- 8142 中等教育学校
- 815 特別支援学校
- 8151 特別支援学校
- 816 高等教育機関
- 8161 大学
- 8162 短期大学
- 8163 高等専門学校
- 817 専修学校,各種学校
- 8171 専修学校
- 8172 各種学校
- 818 学校教育支援機関
- 8181 学校教育支援機関
- 819 幼保連携型認定こども園
- 8191 幼保連携型認定こども園
中分類 82 その他の教育,学習支援業
- 820 管理,補助的経済活動を行う事業所(82その他の教育,学習支援業)
- 8200 主として管理事務を行う本社等
- 8209 その他の管理,補助的経済活動を行う事業所
- 821 社会教育
- 8211 公民館
- 8212 図書館
- 8213 博物館,美術館
- 8214 動物園,植物園,水族館
- 8215 青少年教育施設
- 8216 社会通信教育
- 8219 その他の社会教育
- 822 職業・教育支援施設
- 8221 職員教育施設・支援業
- 8222 職業訓練施設
- 8229 その他の職業・教育支援施設
- 823 学習塾
- 8231 学習塾
- 824 教養・技能教授業
- 8241 音楽教授業
- 8242 書道教授業
- 8243 生花・茶道教授業
- 8244 そろばん教授業
- 8245 外国語会話教授業
- 8246 スポーツ・健康教授業
- 8249 その他の教養・技能教授業
- 829 他に分類されない教育,学習支援業
- 8299 他に分類されない教育,学習支援業
教育,学習支援業の規模

市場規模
教育,学習支援業の市場規模は約10兆円に達しています。
そのうち、学習支援業(学習塾や予備校など)が約1兆円を占めており、ICTを活用したオンライン教育サービスの拡大によって、さらに成長が見込まれています。
ただし、少子化の影響は避けられません。
子供向け市場の減少を補う新たなマーケットの創出や付加価値を付けた顧客単価の向上は不可欠になるでしょう。
雇用規模
約150万人の労働者が従事しており、全産業の約2%を占めています。
特に、女性や若年層の雇用割合が高い特徴があります。
また、非常勤講師やアルバイトの割合が多いのもこの業界の特徴とされ、不安定な雇用や低賃金が人的な質を低下させていると懸念されています。
教育,学習支援業を代表する企業

特に学校教育においては、多くの公的機関と民間企業が存在します。
その中でも、特に注目すべき代表的な民間企業を紹介します。
ベネッセホールディングス株式会社
「進研ゼミ」や「こどもちゃれんじ」など、幅広い世代に向けた通信教育サービスを提供する企業です。
また、国内外で幼児教育や学校運営、介護事業なども手掛けています。
近年ではオンライン教育やAIを活用した学習支援にも力を入れています。

株式会社ベネッセホールディングス
株式会社Z会
難関校受験向けの学習教材や通信教育を提供する企業です。
特に難易度の高い学習コンテンツで知られ、受験生やその親から高い信頼を得ています。
また、オンライン教育サービスを強化しており、デジタル化への対応が進んでいます。

株式会社Z会
通信教育事業、首都圏・関西圏・静岡地区の教室事業、出版事業、模擬試験を運営。
株式会社リクルート
運営する「スタディサプリ」は、リーズナブルな価格で質の高いオンライン授業を提供するプラットフォームです。
小学生から高校生、大学受験生向けまで幅広いサービスが展開されており、学習効率の高さが評価されています。

株式会社リクルート
国内外の販促メディア事業、HRテクノロジーを除くHR事業に関する事業管理
株式会社ナガセ(東進ハイスクール)
「東進ハイスクール」や「東進衛星予備校」を展開する大手予備校です。
ハイレベルな映像授業と、徹底した個別指導で多くの受験生を支援しています。
また、全国に校舎を展開し、地方でも首都圏と同じ質の教育を受けられる環境を提供しています。

株式会社ナガセ
教育(予備校、塾、出版等)東進ハイスク-ル等経営している会社
です。
学校法人創志学園
通信制高校の先駆けとして、クラーク記念国際高等学校を全国に展開しています。
多様な学びのスタイルを提供し、不登校や中途退学者への支援を通じて、新たな教育の可能性を広げています。

学校法人創志学園
私立学校(大学、短大、専門学校)の運営
今後の展望

テクノロジー活用による教育革新
テクノロジーの活用は今後さらに進展するため、学校不要論を唱える人もいるくらいです。
AIやビッグデータを活用した個別最適化学習は、学習履歴、正答率、学習速度などを分析し、各自に合った学習プランを提供、学習効率を飛躍的に向上させるので、いわゆる「落ちこぼれ」を撲滅するでしょう。
また、コロナ禍以降のオンライン教育の普及で、地理的な制約を超えた教育が一般化しています。
ICTを活用した学習環境が整備されれば、都市部と地方の教育格差是正にもつながると期待されています。
さらに、メタバースやVR技術を活用した仮想教室の実現で、よりインタラクティブで没入感のある学習が提供されるかもしれません。
生涯学習・リカレント教育の拡大
働き方やキャリア形成の多様化が進む中で、社会人や高齢者を対象としたリカレント教育(学び直し)の需要が高まっています。
高齢化に伴い、DX(デジタルトランスフォーメーション)に対応するためのスキル習得やAI時代に求められる新しい職業能力を学ぶ機会は、今後ますます重要となるでしょう。
企業と教育機関が連携して、働きながら学べるプログラムや資格取得支援の拡大が実現されれば、生涯現役も夢ではなくなります。
教育のカスタマイズ化
画一的な教育から個別化・カスタマイズ化へとシフトする流れが加速しています。
従来の「集団授業」でなく、各自の興味や得意分野に応じた教育が、AIやオンライン学習を活用した個別指導型プログラムの導入によって実現されつつあります。
今後の課題

教育格差の拡大
ICTを活用した教育の普及は、インターネット環境やデバイスの整備が不十分な地域において、デジタル格差を生む懸念があります。
特に、地方や過疎地域、また経済的に厳しい家庭ではオンライン教育にアクセスできない場合があり、教育の公平性が課題になっています。
少子化による市場縮小
少子化の進行は、教育業界全体の市場縮小につながる懸念があります。
大学は全入時代となり、浪人数は激減しています。
学習塾といった子どもを対象とした教育サービスにとって、少子化は直接的な大きな脅威です。
人材確保
学習塾や予備校では、長時間労働や低賃金が問題とされ、スタッフの確保が難しくなっているため、AIや自動化技術を活用した、労働負担軽減への取り組みが急務です。
まとめ
教育,学習支援業は、学びや成長を支える産業で、日本社会の知識基盤と人格形成を支える重要な役割を担っています。
日本人のモラルが維持できているのも、教育,学習支援業の貢献が大なのです。
近年注目されているのが、テクノロジーを活用した教育で、オンラインやAIを活用した個別最適化学習は、従来の教育の枠を超えた新たな学びの機会を提供しています。
教育プラットフォームへのアクセス性向上で、地理的な制約や時間の制限を超えた教育機会が広がっています。
さらに、多様化する学習ニーズにも対応し、働きながらスキルアップを目指す社会人やリカレント教育を必要とする人々へも、学習機会を提供しています。
教育,学習支援業は、社会と経済の両面で日本社会にとって欠かせない産業であり、少子高齢化が進む今後にあっても、その需要は拡大していくと予想されます。
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AJC 全国学習塾協同組合
全国私塾教育ネットワーク(私塾ネット)
埼玉県私塾協同組合
神奈川私塾協同組合
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