建設業は、GDPに占める割合や就業人口においても社会基盤を支える重要な産業といえるでしょう。
景気動向に大きく依存し、景気が好調なときは民間投資が増え、建設需要が拡大しますが、景気が低迷すると民間投資が抑制され、公共事業の重要性が増す特徴があります。
具体的な特色や規模、代表的な企業について詳しく解説します。
産業分類上の建設業
産業分類における建設業の定義
総務省が提供する「日本標準産業分類(JSIC)」において、建設業は大分類「D 建設業」として位置付けられています。
建設業は主に以下のように定義されます。
- 建物や構造物を新築、増築、改修する活動
- 土木工事を含むあらゆるインフラの設置や維持管理
- 解体工事やリフォームなどの改修作業
建設業の産業分類の3つの中分類
建設業は、さらに以下の3つの中分類に分けられます。
総合工事業
ゼネコンが代表的で、建設プロジェクト全体の計画、設計、施工を一括で管理する役割を持つ比較的大きい組織です。建築工事だけでなく、土木工事も含みます。
職別工事業(専門工事業)
特定の分野や技術に特化した工事を行う組織です。電気工事、配管工事、塗装工事などが挙げられます。
設備工事業
建物や構造物における機能を充実させるための設備設置に特化した組織で、空調設備工事、給排水設備工事、電気通信工事が含まれます。
建設業の特色
多様な分野と専門性
建設業は、土木工事、建築工事、設備工事など多岐にわたる分野で構成されています。
各分野には高度な専門知識と技術が求められ、土木工事では道路や橋梁の建設、建築工事では住宅や商業施設の建設、設備工事では電気や空調の設置など、建物に関するあらゆる工事が含まれます。
各分野は相互に連携し、プロジェクトの成功に寄与しています。
ピラミッド型の業界構造
建設業界は、ゼネコン(総合建設業者)を頂点とするピラミッド型で裾野が広い構造を持っています。
ゼネコンは、全体のプロジェクト管理を担当し、専門工事業者(サブコン)や下請け業者に業務を発注します。
この多層的な構造により、各専門分野の技術と経験が活かされ、複雑なプロジェクトの遂行が可能になっています。
社会インフラの構築と維持
建設業は、道路、橋梁、ダム、公共施設などの社会インフラの構築と維持を担っています。
これらのインフラは、経済活動や日常生活の基盤であり、建設業の役割は安心・安全だけではなく、社会の発展に直結しています。
また、災害時の復旧や老朽化した施設の改修など、社会のニーズに応じた柔軟な対応も求められます。
建設業の規模
経済への貢献度
建設業の経済規模は、日本経済において重要な位置を占める分野であり、GDPへの貢献度や雇用創出効果、関連産業への波及効果など、多岐にわたる影響を及ぼしています。
具体的に日本のGDPにおける建設業の寄与は、約6〜8%とされています。
約15兆円の公共事業や民間投資に伴う建設需要は、景気動向に影響を与える要因のひとつであり、雇用創出や関連産業への波及効果も大きくなっています。
国家規模の大規模プロジェクトの実施時には、地域経済の活性化にも寄与します。
企業規模の多様性
建設業界には、売上高が1兆円を超えるスーパーゼネコンから、地域密着型の中小企業まで、多様な規模の企業が存在します。
スーパーゼネコンは、国内外の大規模プロジェクトを手掛ける一方、中小企業は地域の住宅建設やリフォームなど、地元密着型の小規模工事を提供しています。
この多様性が、業界全体の柔軟性と競争力を支えています。
労働力の動向
建設業は、日本国内で約500万人以上と多くの労働者を雇用しており、その労働力は熟練工から技術者、管理職まで多岐にわたります。
これは、全労働力人口の約7%に相当します。
しかし、近年では労働力不足や高齢化が課題となっており、若手や外国人人材の育成や働き方改革、技術革新による生産性向上が求められています。
建設DX(デジタルトランスフォーメーション)の推進により、労働環境の改善と省力化・効率化が進められています。
関連産業への波及効果
建設資材産業
建設業は、セメント、鉄鋼、木材、ガラス、電気設備など、多くの関連産業への需要を生み出します。建設業の拡大でこれらの産業も成長します。セメント業界の市場規模は年間約1兆円、鉄鋼業界の市場規模は建設用鉄鋼の需要が鉄鋼業全体の約30%を占めます。
建設機械産業
建設現場には、ショベルカー、クレーン、ダンプトラックなどの建設機械が不可欠です。日本は建設機械の製造でも世界的なリーダーであり、コマツや日立建機などが国際市場でも活躍しています。
建設・鉱山機械、ユーティリティ(小型機械)、林業機械、産業機械などの製造・販売
建設機械・運搬機械及び環境関連製品等の製造・販売・レンタル・アフターサービス
建設業を代表する企業
スーパーゼネコン5社
日本の建設業界を代表する企業として、以下のスーパーゼネコン5社が挙げられます。
大林組
高層ビルや大型商業施設の建設に強みを持ち、国内外で多数のプロジェクトを手掛けています。技術革新にも積極的で、建設DXの推進にも注力しています。
株式会社大林組
国内外建設工事、地域開発・都市開発・海洋開発・環境整備・その他建設に関する事業、及びこれらに関するエンジニアリング・マネージメント・コンサルティング業務の受託、不動産事業ほか
鹿島建設
土木工事やインフラ整備に定評があり、特に橋梁やトンネルの建設で多くの実績を持っています。また、海外展開にも積極的で、グローバルな視点で事業を展開しています。
鹿島建設株式会社
1.土木建築及び機器装置その他建設工事全般に関する請負又は受託。 2.建設プロジェクト並びに地域開発、都市開発、海洋開発、宇宙開発、資源開発、環境整備、エネルギー供給等のプロジェクトに関する調査、研究、評価、診断、企画、測量、設計、監理、調達、運営管理、技術指導その他総合的エンジニアリング、マネージメント及びコンサルティング ほか
清水建設
建築事業を主力とし、超高層ビルやドーム建築に強みを持っています。東京タワーや東京ドームなどの著名な建築物を手掛けており、技術力の高さが特徴です。
建築・土木等建設工事の請負(総合建設業)
大成建設
市街地開発や再開発プロジェクトに強みを持ち、都市の再生や新たな街づくりに貢献しています。埼玉スーパーアリーナや横浜ベイブリッジなどの大型プロジェクトを手掛けています。
建設事業 開発事業 その他の事業
竹中工務店
高層ビル建築に特化し、建築物の約9割が建物関連となっています。東京タワーやあべのハルカスなどの超高層建築を手掛けており、建築技術の高さが際立っています。
株式会社竹中工務店
1.建築工事及び土木工事に関する請負、設計及び監理 2.建設工事、地域開発、都市開発、海洋開発、宇宙開発、エネルギー供給および環境整備等のプロジェクトに関する調査、研究、測量、企画、評価、診断等のエンジニアリング及びマネジメント 3.土地の造成並びに住宅の建設 4.不動産の売買、賃貸、仲介、斡旋、保守、管理及び鑑定並びに不動産投資に関するマネジメント 他
準大手ゼネコン
スーパーゼネコンに次ぐ規模の企業として、以下の準大手ゼネコンが挙げられます。
長谷工コーポレーション
主にマンション建設に強みを持つゼネコンで、日本の都市部に多くの実績があります。分譲マンション市場におけるシェアが高く、設計から施工、販売まで一貫したサービスを提供しています。
株式会社長谷工コーポレーション
建設事業、不動産事業、エンジニアリング事業
五洋建設
港湾工事や海洋土木分野でのリーディングカンパニーであり、海外プロジェクトも多く手掛けています。特に、水中建設技術に定評があります。
五洋建設株式会社
総合建設業
フジタ
大規模開発や都市再開発事業に力を入れ、全国各地でのプロジェクトを展開しています。高層ビルや公共施設の建設に加え、環境に配慮した取り組みを積極的に行っています。
株式会社フジタ
1.建設工事の請負、企画、設計、監理およびコンサルティング業務 2.宇宙開発、海洋開発、地域開発、都市開発、資源開発および環境整備等に関する調査、企画、設計、監理およびコンサルティング業務 他
大和ハウス工業
建設業に加えて不動産開発にも注力しており、物流施設や商業施設の建設に強みがあります。住宅市場でも高い評価を受けており、幅広い事業領域を持っています。
住宅事業・賃貸住宅事業・流通店舗事業・建築事業・マンション事業・環境エネルギー事業・海外事業等
地域密着型の中小企業
建設業界には、地域に根差した中小企業も多く存在し、その数はおよそ45万社ともいわれています。
東京都が約10万社、大阪府が約4万社、愛知県が約3.5万社、福岡県が約3万社となっています。
これらの企業は、住宅建築やリフォーム、公共施設の建設、道路工事など、地元の需要に応える形で活躍しています。
中小企業は、地域社会との深い結びつきを持ち、迅速な対応や細やかなサービスを強みとしています。
海外展開とグローバル化
日本の建設業界は、国内市場に加え、海外プロジェクトにも積極的に進出しています。
インフラ需要が高いアジアや中東、アフリカ諸国では、日本企業の高い技術力が評価されています。
鹿島建設や五洋建設は、海外でのプロジェクトにおいて高い実績を誇ります。
建設業界の未来と課題
技術革新と建設DXの推進
近年、建設業界ではデジタル技術の活用が進んでいます。
BIM(Building Information Modeling)やIoT、AI技術を導入することで、プロジェクトの効率化や品質向上が図られています。
また、ロボット技術を活用した自動化も進行中で、労働力不足の解消や安全性の向上が期待されています。
環境への配慮と持続可能な開発
建設業界は、環境負荷の低減に向けた取り組みを強化しています。
再生可能エネルギーの活用や省エネ建築の推進、廃材のリサイクルなど、持続可能な開発を目指す活動が重視されています。
SDGs(持続可能な開発目標)への貢献なども企業活動の中核に位置付けられています。
人材育成と働き方改革
建設業界では、高齢化や労働力不足が課題となっています。
そのため、若手人材の育成や技能伝承が急務となっています。
また、働き方改革を進めることで、労働環境の改善や女性や外国人労働者の活躍推進も行われています。
政府や業界団体も連携して、人材確保と育成に取り組んでいます。
まとめ
建設業は、社会基盤を支える重要な産業であり、その多様な分野と専門性、ピラミッド型の業界構造、地域社会との結びつきなど、多くの特色を持っており、国家規模のプロジェクトから地域密着型の工事まで、幅広い活動を展開しています。
また、スーパーゼネコンをはじめとする大手企業から、中小企業まで多様な規模の企業が業界を支えています。
近年では、労働力不足や高齢化、技術継承といった課題に対応すべく、技術革新や環境配慮、人材育成などに取り組み、未来に向けた新たな展望を模索しています。
建設業のこれからの発展は、社会全体の持続可能性と直結しており、引き続き注目される分野であることは間違いありません。