化学工業の特色や代表する企業|医薬品や化粧品もこの業界

化学工業は、化学反応を用いて物質を加工・製造した製品を供給する産業です。

日常生活の中では意識されないものの、医薬品、化粧品、インクなどの比較的目に触れる製品から、プラスティック、ゴムなどの部品類、さらに、農薬、塗料、火薬など、陰ながら社会に貢献する縁の下の力持ち的な存在まで、すべてが化学の力で成立しています。

具体的に、基礎化学品、石油化学製品、特殊化学品、医薬品、農薬、樹脂など幅広いカテゴリを包含し、日本経済の中心である、自動車、建築、食品、エネルギー、IT分野などの多くの産業に原材料を供給する基盤産業として重要なポジションを占めています。

日本の化学界の歴史は古く、ノーベル賞の受賞履歴などからのわかる通り、世界の主要な化学産業国のひとつとして認識されています。

化学工業の出荷額は約41兆円に達しており、製造業全体の中でも大きな割合を占め、うち輸出額は約9兆円で、輸出産業としても大きな存在感を示しています。

化学工業は、製品供給を通じて現代社会のさまざまな課題に対応していますが、次世代エネルギーやカーボンニュートラル技術にも、当然ながら化学工業の貢献が期待されています。

化学工業の特色

化学工業にはいくつかの顕著な特徴があり、それは産業全体の発展と競争力を支える重要な基礎体力になっています。

研究開発力

化学工業は研究開発への投資が多い特徴があり、日本企業はGDP比で他国を上回る巨額な研究開発費を投入しています。

新材料やバイオテクノロジー、人工知能(AI)を活用した化学技術の進展は、日本企業の国際競争力をさらに高める重要な要素となっています。

幅広い分野への応用

化学工業製品は、医薬品、農業、建築、自動車など、多くの産業に成果物が利用されています。

化学工業は多様な分野への応用を可能にする基盤産業としての役割を果たしており、日本経済の発展を下支えしているといっても過言ではない存在なのです。

安定供給の確保

日本は化石資源が少なく、原材料の大部分を輸入に頼っているため、資源価格の変動や輸送コストの影響を受けやすい構造ですが、国際的なサプライチェーンを構築し、安定的な原材料供給を確保しています。

環境負荷低減と持続可能な社会への貢献

環境問題への取り組みは、化学工業にとって不可避な課題で、SDGs(持続可能な開発目標)の達成に向けた努力を業界全体で続けています。

廃プラスチックのリサイクル技術やカーボンニュートラルを実現するための触媒技術など、環境対応型の革新的な技術が実用化されつつあります。

産業分類における化学工業

日本標準産業分類において、化学工業は「中分類16」に位置付けられています。

この中分類16には、以下のような多様な製品群が含まれます。

小分類~細分類

  • 160  管理,補助的経済活動を行う事業所(16化学工業)
    • 1600  主として管理事務を行う本社等
    • 1609  その他の管理,補助的経済活動を行う事業所
  • 161  化学肥料製造業
    • 1611  窒素質・りん酸質肥料製造業
    • 1612  複合肥料製造業
    • 1619  その他の化学肥料製造業
  • 162  無機化学工業製品製造業
    • 1621  ソーダ工業
    • 1622  無機顔料製造業
    • 1623  圧縮ガス・液化ガス製造業
    • 1624  塩製造業
    • 1629  その他の無機化学工業製品製造業
  • 163  有機化学工業製品製造業
    • 1631  石油化学系基礎製品製造業(一貫して生産される誘導品を含む)
    • 1632  脂肪族系中間物製造業(脂肪族系溶剤を含む)
    • 1633  発酵工業
    • 1634  環式中間物・合成染料・有機顔料製造業
    • 1635  プラスチック製造業
    • 1636  合成ゴム製造業
    • 1639  その他の有機化学工業製品製造業
  • 164  油脂加工製品・石けん・合成洗剤・界面活性剤・塗料製造業
    • 1641  脂肪酸・硬化油・グリセリン製造業
    • 1642  石けん・合成洗剤製造業
    • 1643  界面活性剤製造業(石けん,合成洗剤を除く)
    • 1644  塗料製造業
    • 1645  印刷インキ製造業
    • 1646  洗浄剤・磨用剤製造業
    • 1647  ろうそく製造業
  • 165  医薬品製造業
    • 1651  医薬品原薬製造業
    • 1652  医薬品製剤製造業
    • 1653  生物学的製剤製造業
    • 1654  生薬・漢方製剤製造業
    • 1655  動物用医薬品製造業
  • 166  化粧品・歯磨・その他の化粧用調整品製造業
    • 1661  仕上用・皮膚用化粧品製造業(香水,オーデコロンを含む)
    • 1662  頭髪用化粧品製造業
    • 1669  その他の化粧品・歯磨・化粧用調整品製造業
  • 169  その他の化学工業
    • 1691  火薬類製造業
    • 1692  農薬製造業
    • 1693  香料製造業
    • 1694  ゼラチン・接着剤製造業
    • 1695  写真感光材料製造業
    • 1696  天然樹脂製品・木材化学製品製造業
    • 1697  試薬製造業
    • 1699  他に分類されない化学工業製品製造業

化学工業の規模

国内規模

日本の化学工業の規模は非常に大きく、製造業全体の中でも重要なウエイトを占めています。

製造品出荷額等(付加価値を含む生産規模)は約40.9兆円に達しており、製造業全体の約15%を占める割合で、自動車産業や機械産業と並ぶ国内主要産業のひとつに数えられます。

さらに、化学工業は製造業の中でも労働生産性が高い分野として知られています。

製造プロセスに高度な技術が求められるため、高い付加価値を持つ製品が多いのです。

輸出規模

化学工業は国内需要にとどまらず、輸出産業としても重要な役割を果たしています。

化学製品の輸出額が約9兆円に達しており、日本の総輸出額全体の約15%を占めました。

特に成長が顕著な分野は以下の通りですが、これらの製品は、技術力を背景に日本企業が国際市場で高い競争力を持つ分野です。

とりわけ、アジアや北米、欧州への輸出が活発であり、各国の産業基盤を支える役割を果たしています。

特殊化学品

医薬品原薬や高機能樹脂など、高付加価値製品が多い分野です。

医薬品

抗がん剤やワクチンなどの需要が国際的に増加しています。

高分子材料

自動車や航空機に使用される炭素繊維や高機能プラスチックが代表的です。

世界での地位

世界でも日本の化学工業は高い評価を受けています。

日本の化学産業の世界シェアは約7%で、中国、アメリカ、ドイツに次ぐ規模です。

特に、高度な技術と品質を求められる特殊化学品や医薬品分野では、世界市場での存在感が強く、高機能材料や環境対応型製品で国際的な競争力を維持しています。

一方で、日本国内の資源制約や製造コストの高さにより、基礎化学品(エチレン、プロピレンなど)では、中国やアメリカにシェアを譲る形となっています。

雇用規模と社会的役割

日本国内の化学工業には、約80万人の労働者が従事しており、製造業全体の約10%を占めています。

特に、高度な技術を要するため、研究者や技術者など、ハイスペック人材の雇用が多くなっています。

化学工業は単に経済面での貢献にとどまらず、高い見識を持った次世代技術者を育成し、日本の産業基盤を支える重要な役割を果たしているのです。

新市場の創出

化学工業の規模は単に生産額や雇用人数だけでなく、未来の産業を創出する力によっても評価されます。

近年、化学工業は環境対応型技術を中心に成長しています。

具体的には、以下のような分野で市場を創出していますが、これらの技術革新は未来への種となり、化学工業の経済的規模をさらに拡大する可能性を秘めています。

バイオプラスチック

化石燃料を使用せず、植物由来の素材を活用したプラスチック製品です。

リサイクル技術

廃プラスチックを再利用する技術や使用済み化学製品を分解して資源を再生する取り組みです。

カーボンニュートラル関連技術

二酸化炭素を吸収・固定する触媒技術や低エネルギーで化学反応を起こす省エネルギー技術です。

課題と展望

化学工業は十分な成長余力があるとはいえ、いくつかの課題も抱えていますが、高付加価値製品の開発能力に優れているため、総じてさらなる成長が期待できるでしょう。

原材料の輸入依存

石油や天然ガスなどの資源を輸入に頼っており、国際価格の変動が産業全体に影響を与えます。

環境負荷の低減

環境負荷が高い産業のひとつとされ、二酸化炭素排出量削減や廃棄物問題に対応する技術革新が求められています。

国際競争力の維持

中国や東南アジア諸国などの新興国の急速な成長により、基礎化学品分野での競争が激化しています。

化学工業を代表する企業

日本国内の化学工業は多くのグローバル企業を輩出しており、その技術力と製品力は世界的に高く評価されています。

三菱ケミカル株式会社

三菱ケミカル株式会社は、石油化学製品からバイオテクノロジーに至るまで、多岐にわたる製品を提供しています。

カーボンニュートラルを目指した技術開発にも注力しており、グリーンイノベーションの分野で先駆的な役割を果たしています。

三菱ケミカル株式会社

総合化学会社 各種化学製品等の研究・開発・製造・販売

住友化学株式会社

住友化学株式会社は、石油化学、農薬、医薬品、IT関連製品を製造し、その製品は国内外で高く評価されています。

特に農薬やバイオテクノロジー分野での研究開発が進んでいます。

住友化学株式会社

石油化学部門、エネルギー・機能材料部門、情報電子化学部門、健康・農業関連事業部門、医薬品部門、その他

信越化学工業株式会社

信越化学工業株式会社は、半導体製造に欠かせない世界最大級のシリコーンメーカーとして知られています。

また、塩化ビニル樹脂の生産でも世界トップクラスのシェアを誇ります。

信越化学工業株式会社

塩化ビニル、シリコーン、半導体シリコン、レア・アース・マグネット、合成石英、セルロース誘導体等の製造・販売

まとめ

化学工業は他の産業への影響が大きく、国内産業全体にとっても不可欠な基盤であり、経済の成長の点でも重要な下支え的な役割を果たしています。

その特色は、高い研究開発力、幅広い分野への応用、環境対応技術などが挙げられますが、特に世界をリードする高い技術力は、化学工業発展の源泉になっています。

日本の化学工業を代表する企業は、グローバル市場でも存在感を示しており、技術革新や環境対応型製品の開発においては、世界的規模のライバル企業にも決して引けを取っていません。

産業比較でも国内トップクラスの花形であり、輸出の成長も続いています。

加えて、高度な化学者の育成も担い、やや大袈裟にいえば、日本の未来の希望にもなっています。

化学工業の発展は、生活や他産業の進歩に欠かせないものであり、これからもその重要性は増していくでしょう。

関連リンク集

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公益社団法人 日本下水道協会
公益社団法人 日本包装技術協会
一般財団法人 ケケン試験認証センター
一般財団法人 製品安全協会
一般財団法人 東京プラスチック会館
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