
窯業・土石製品製造業は、一般には馴染が薄いと思われる、セメントやコンクリートなどの建築資材、ガラス製品全般、セラミック製品、耐火物などを製造する産業です。
自然界から採掘される土石や鉱物を原材料とし、建設現場で使用されるセメントやコンクリート、あるいは高温での焼成や精密な加工技術を用いて、耐久性や特殊機能を持つ製品などを生産します。
主な製品には、陶磁器やガラス、セメント、セラミックス、耐火物、レンガ、タイルなど、耐久性や耐熱性に優れた特性があり、建築資材、家庭用品、工業用部品、電子機器部品など、多岐にわたる用途で使用されています。
自然界の土石や鉱物を原材料にしているため、近年では環境配慮や持続可能性への憂慮が示される場面が多く、業界全体でサスティナブルな対応が急速に進んでいます。
窯業・土石製品製造業の特色

技術力と専門性
窯業・土石製品製造には、原材料の調達から加工、焼成に至るまで、高度な専門知識と技術が求められます。
近年、ファインセラミックスの需要が拡大しており、電子部品や半導体産業の重要素材として利用されていますが、この製造工程では、微細な粉末材料を精密に制御して焼結し、強度や耐熱性を持たせる高度な技術が必要になります。
また、光ファイバー用ガラスの製造では、極めて純度の高い材料と精密な製造技術が欠かせません。
日本企業はこれら分野で世界トップクラスの技術力を有しており、国際市場でも高い競争力を発揮しています。
製品多様性
窯業・土石製品は、各業界の用途や特性に応じた多様な製品を提供しています。
建築分野ではセメントやコンクリート製品、タイル、屋根瓦などを供給し、電子機器や自動車部品では高機能セラミックスや特殊ガラスが活用されています。
環境対応と持続可能性
自然界から採掘される土石や鉱物を原材料とする上に、エネルギー多消費型の産業であるため、環境負荷軽減への取り組みにいち早く取り組んできた実績があります。
事実、窯業・土石製品製造業は製造業において、化学部門と並んで2番目にCO2の排出量が多い業界なので、セメント製造における二酸化炭素(CO₂)排出削減技術の導入や製造工程で発生する廃熱の再利用、さらには副産物や産業廃棄物を原料として再利用する技術の開発などが進んでいます。
一部の製品は再生可能エネルギー分野に不可欠な部材として利用されており、循環型社会への一助となっています。
産業分類における窯業・土石製品製造業

日本標準産業分類において、窯業・土石製品製造業は以下に分類されますが、それぞれが異なる市場や用途に特化しており、多様な産業ニーズに応える役割を果たしています。
この分類が示す通り、窯業・土石製品製造業は多層的で幅広い分野に対応しています。
小分類と細分類
- 210 管理,補助的経済活動を行う事業所(21窯業・土石製品製造業)
- 2100 主として管理事務を行う本社等
- 2109 その他の管理,補助的経済活動を行う事業所
- 211 ガラス・同製品製造業
- 2111 板ガラス製造業
- 2112 板ガラス加工業
- 2113 ガラス製加工素材製造業
- 2114 ガラス容器製造業
- 2115 理化学用・医療用ガラス器具製造業
- 2116 卓上用・ちゅう房用ガラス器具製造業
- 2117 ガラス繊維・同製品製造業
- 2119 その他のガラス・同製品製造業
- 212 セメント・同製品製造業
- 2121 セメント製造業
- 2122 生コンクリート製造業
- 2123 コンクリート製品製造業
- 2129 その他のセメント製品製造業
- 213 建設用粘土製品製造業(陶磁器製を除く)
- 2131 粘土かわら製造業
- 2132 普通れんが製造業
- 2139 その他の建設用粘土製品製造業
- 214 陶磁器・同関連製品製造業
- 2141 衛生陶器製造業
- 2142 食卓用・ちゅう房用陶磁器製造業
- 2143 陶磁器製置物製造業
- 2144 電気用陶磁器製造業
- 2145 理化学用・工業用陶磁器製造業
- 2146 陶磁器製タイル製造業
- 2147 陶磁器絵付業
- 2148 陶磁器用はい(坏)土製造業
- 2149 その他の陶磁器・同関連製品製造業
- 215 耐火物製造業
- 2151 耐火れんが製造業
- 2152 不定形耐火物製造業
- 2159 その他の耐火物製造業
- 216 炭素・黒鉛製品製造業
- 2161 炭素質電極製造業
- 2169 その他の炭素・黒鉛製品製造業
- 217 研磨材・同製品製造業
- 2171 研磨材製造業
- 2172 研削と石製造業
- 2173 研磨布紙製造業
- 2179 その他の研磨材・同製品製造業
- 218 骨材・石工品等製造業
- 2181 砕石製造業
- 2182 再生骨材製造業
- 2183 人工骨材製造業
- 2184 石工品製造業
- 2185 けいそう土・同製品製造業
- 2186 鉱物・土石粉砕等処理業
- 219 その他の窯業・土石製品製造業
- 2191 ロックウール・同製品製造業
- 2192 石こう(膏)製品製造業
- 2193 石灰製造業
- 2194 鋳型製造業(中子を含む)
- 2199 他に分類されない窯業・土石製品製造業
窯業・土石製品製造業を代表する企業

太平洋セメント株式会社

太平洋セメント株式会社
(1)セメント、レディーミクストコンクリート及びセメントを使用する製品の製造並びに販売 (2)土木建築材料の製造、加工及び販売 (3)石灰石その他鉱物及び土石の採掘、加工並びに販売 (4)環境マネージメント事業・廃棄物の処理及び再生利用 (5)電気・通信・電子機器及びこれらの部品、材料の製造 並びに販売
住友大阪セメント株式会社

住友大阪セメント株式会社
セメント製造・販売他
TOTO株式会社
TOTOは、衛生陶器や建築用セラミック製品の分野で国内外に広く認知されています。
先進的なデザイン性と高機能製品の提供で、住宅設備市場で高いシェアを占めています。
また、省エネや環境対応型の製品開発にも注力しており、持続可能な社会の実現に寄与しています。

TOTO株式会社
京セラ株式会社

京セラ株式会社
ファインセラミック部品、半導体部品、電子部品、切削工具、ソーラー発電システム、宝飾品、セラミック日用品、通信機器などの製造・販売
日本ガイシ株式会社

日本碍子株式会社
がいしなど電力関連機器、産業用セラミックス製品、特殊金属製品の製造販売及びプラントエンジニアリング事業
日本板硝子株式会社
建築用、自動車用、電子部品用など多岐にわたるガラス製品を製造し、特に高機能ガラスの分野で世界的な競争力を持つ企業です。
断熱ガラスや遮音性を高めた製品は、建築や自動車分野において広く利用されています。

日本板硝子株式会社
住宅・ビル用ガラス、各種建材商品、自動車・鉄道車両用ガラス、ガラス繊維、オプトロニクス関連商品、エレクトロニクス用ガラス等の製造・販売
AGC株式会社
1907年三菱の二代目岩崎彌之助の次男岩崎俊彌によって創立された国内NO1のガラスメーカーです。
以前は「旭硝子」でしたが、2018年に社名変更し、現在のAGCになっています。

AGC株式会社
世界トップシェアを誇る自動車用安全ガラスの生産、設計、開発
(合わせガラス、強化ガラス、高機能ガラスの製造)
あなたの造ったガラスが世界中の車に載って走ります!!
窯業・土石製品製造業の規模

国内市場規模
窯業・土石製品製造業の国内市場規模は建設需要の伸びや産業の多様化によって成長しています。
特にセメントやコンクリート製品は国内インフラの基盤を下支えしており、巨大な売上規模を誇る建築・土木分野の成長を通じて、日本経済に大きく寄与していますが、輸送コストが高く、JIS法による厳格な製品規格が定められているため、製品の差別化が難しく、基本的には内需依存型の産業で、大手企業がスケールメリットを生かし、シェアを握る寡占市場となっています。
競争力の強化にはコスト削減や効率的な物流体制の確立が欠かせなくなるでしょう。
また、タイルや衛生陶器などの住宅向け製品の需要も堅調で、とりわけ便器は海外市場でも人気で輸出が堅調に伸びています。
建築用の省エネガラスやプライバシー保護・デザイン性を兼ね備えたスマートガラスの開発も進んでいます。
ファインセラミックスなどの高付加価値製品は、技術革新が顕著で、電子機器、医療機器、航空宇宙産業などの分野で需要が拡大しています。
地域別の分布
生産拠点は、愛知県や岐阜県などの中部地方に集中傾向にあります。
この地域は、陶磁器やタイルの一大生産地であり、国内需要の多くを賄っています。
一方で、ガラス製品やセメント製造は関東地方や九州地方でも盛んで、輸送インフラの利便性を活用し、効率化を実現しています。
財務状況
売上原価率が高く、売上高総利益率は比較的低水準にあります。
固定資産比率が高く、大規模な設備投資が必要な産業であるため、負債は増える傾向ですが、自己資本比率は50%程度と比較的安定しています。
コロナで需要が一時的に減少したものの、以後は回復基調で、特に電子部品向けのセラミックス製品などが業績を牽引しています。
国際市場
日本企業は高品質な窯業・土石製品を海外市場にも供給しており、特にアジアや中東地域のインフラ整備需要に応じて輸出を拡大しています。
セメント製品は、国内市場の縮小に伴い、新興市場への進出が重要視されており、アジアや中東、アフリカといった地域でのインフラ開発が成長の鍵を握っているでしょう。
輸出額は約1兆円を超え、特にセラミックスや耐火物の分野で高い評価を受けています。
まとめ
窯業・土石製品製造業は、建設業に不可欠なセメントなどを供給するなど、社会基盤を支える重要な産業です。
一方で、国内市場の縮小や環境規制強化などの困難な課題にも直面しています。
特に少子高齢化で国内建設需要の減少が確実視される中、東南アジアやアフリカなどの新興国における都市開発・インフラ整備に伴うセメント・ガラス製品の需要がこれからの業界を支えることは明らかなので、ここへの参入がひとつの鍵になるでしょう。
また、技術革新にも期待がかかります。
炭化ケイ素(SiC)やセラミックス複合材料(CMC)などの新素材が航空機、電気自動車、半導体分野に浸透すると、世界を席巻でき、新たな稼ぎ頭になるかもしれません。
そして、この技術的な進歩は、課題となっている環境規制でも生かされるはずです。
CO2排出量を抑えた低炭素セメント、リサイクル素材を活用したガラス・セラミックスの新製品開発が着々と進められ、商品化の目処が立ってきました。
また、品質管理や生産効率の向上を目的にIoTやAIを活用したスマート製造技術の導入も加速しています。
窯業・土石製品製造業の成長には、技術開発や新興市場への進出が不可欠であり、ビジネスモデルの再構築が求められているでしょう。
とりわけ、低炭素技術の導入、スマート製造の推進、ファインセラミックスの応用拡大などが、成長の試金石になると思われます。
経済産業省
国土交通省
国土技術政策総合研究所
国立研究開発法人 建築研究所
一般社団法人 全日本瓦工事業連盟
一般社団法人 日本硝子製品工業会
一般社団法人 ニューガラスフォーラム
硝子繊維協会
ガラス産業連合会
全国びん商連合会
ガラスびんフォーラム
全国板硝子商工協同組合連合会
ビール酒造組合
日本酒造組合中央会
公益財団法人 日本環境協会
公益社団法人 食品容器環境美化協会
一般社団法人 日本硝子製品工業会
一般社団法人 全国清涼飲料工業会
公益社団法人 日本缶詰びん詰レトルト食品協会
公益社団法人 日本包装技術協会
ガラスびん3R促進協議会
公益財団法人 日本容器包装リサイクル協会
NEP工業会
オーケー式ハンドホール協会
KLウォール協議会
KTジョイント工法技術協会
群馬県GBX工業会
ザ・ウォール協議会
シールド工法技術協会
斜角門形カルバート工法研究会
植栽コンクリート工業会
スーパーウォール工法研究会
全国エポ工法協会
全国ゴールコン協会
全国コンクリート製品協会
全国宅地擁壁協会
全国Wジョイント管協会
全国リボーン側溝工業会
TF工法/鉄筋コンクリート 建設工事研究会
箱型擁壁協会
パワーホール工業会
PAN WALL工法協会
PC管協会
東日本セメント製品工業組合
ビックリート製品協会
プレキャストコンクリート電線管路研究会
ベジクリート工法協会
ポラコン工業会
YACS(ヤークス)工業会
一般社団法人日本タイル煉瓦工事工業会
一般社団法人全国タイル業協会/全国タイル工業会