経理アウトソーシングとは
経理アウトソーシングとは、社内で行っている経理関連業務を外部の会計専門会社に委託することです。
企業は経理の知識を持つ人材の雇用を減らすことができ、コストを削減できます。
さらに社員が本来注力すべきコア業務に特化できるようになるため、生産性も向上します。
会計処理、税務申告、経理システムの構築など、様々なタイプの経理業務をカバーすることができBPO(Business Process Outsourcing:事業の工程の一部を外部に委託をすること)サービスのひとつとして近年注目されています。
経理アウトソーシング会社の分類
経理代行業者は大きく次の3つに分類されます。
①主に会計事務所が提供する帳簿入力中心の代行
②完全リモートでの経理業務全般の代行
③経理人材派遣での業務代行
①帳簿入力中心の代行
記帳代行は証票類を会計ソフトに入力する作業を指します。
多くの場合、会計事務所が税務顧問の付加サービスとして帳簿入力作業の代行サービスを提供しています。
単なる仕訳入力要員を求めている場合はこれが該当します。
②完全リモートでの経理業務全般の代行
経理アウトソーシング会社に資料を提供し、殆どの経理業務を代行してもらうサービスです。
これまでは、振込や請求業務などのリアル業務が障壁となり実現できませんでしたが、ソフトのクラウド化が進み、アカウントの共有でリモートワークできる環境が整うことにより、本格化してきています。
また、育児休業中の主婦などの在宅ワーカーを利用する経理代行サービス会社も増えています。
経理業務代行は経理アウトソーシング会社が業務フローからサポート業務までを設計するので、社内の業務引継ぎのリスクが低減されます。
また、経理アウトソーシング会社のノウハウを自社内に導入することもできるので、業務の効率化にもつながりやすい利点もあります。
さらに契約次第では、すべての経理業務を外注化できるため、完全に経理部門を持たない組織設計も可能になります。
③経理人材派遣での業務代行
経理の専門人材を派遣させ、社内での経理業務に対応してもらうサービスで、繁忙期などのスポット対応に便利です。
社内で人材を雇用する必要がないため、人件費が調整できます。
そして、社内で作業をしてくれるので、密なコミュニケーションが取れる点がメリットです。
一方、人材の拘束により、コスト高になることが一般的です。
経理代行サービスと税理士
税理士も経理代行サービスの一部と解釈されることもありますが、これを別ジャンルとする考え方もあるようです。
まずは、経理代行サービスと税理士の違いについて知り、それぞれサービス内容から、どちらを選択すべきかを判断しましょう。
税理士業務の範囲
経理代行サービスが対応している業務には「経費精算管理」「記帳業務」「データ入力」「管理業務(受発注管理、在庫の入出庫管理、売上管理などのデータ整理)」「各種帳票類・資料作成業務(請求書、見積書、注文書、決算書、資金調達用資料、助成金申請用資料、事業計画書など)」「給与計算、年末調整」「会計システム仕訳登録」「領収書や書類のファイリング」「書類の郵送」などがあります。
一方、税理士もこれら業務に対応しますが、大きな違いは「税務のアドバイス」に加え、「税務申告業務」になります。
決算申告などの税務申告や税務書類の作成、税務相談などは、法律により非税理士の対応が禁止されています。
経理業務を外注する場合は、業務範囲を明確にし、法令を遵守した上で、適したサービスを利用しましょう。
税理士の料金相場
税理士の料金相場は、顧問契約、決算申告など、内容により変化します。
顧問契約の場合、月額顧問料に決算・税務申告料、記帳代行などが加算されます。
決算申告のスポット対応は決算料にその他のオプションが追加されます。
一般的な相場は月額約3万円、決算報酬は約20万円程度でしょう。
経理代行サービスの必要性
経理代行サービスの利用目的は主に「費用対効果」「人手不足補完」「効率化推進」です。
社内人材の活用と外注化の分かれ目はどこにあるのでしょうか。
まずは経理代行サービスの必要性や有効性を検証してみます。
費用対効果
外注化した場合の絶対額だけではなく、社内人材を抱えた場合との比較、つまり費用対効果の検証が必要でしょう。
社内人材の場合、給与や法定福利費など固定費がマストになります。
さらに、教育研修費や引き継ぎのコストも発生します。
しかし、社員であることの利点もあります。
緊急時対応や他部署との連携業務などがスムーズになり、迅速な業務推進が可能になるのです。
発生する費用だけではなく、柔軟性やスピード感なども含めた費用対効果をトータルで考慮するべきなのです。
人手不足補完
経理は直接的に売上を生まない業務です。
その観点で経理代行サービスの利用を検討しましょう。
雑務の外注化によって、社内人材は経営に直結するようなコア業務に注力できるようになるのか。
これが担保されれば、経理代行サービスの活用は悪い選択肢ではありません。
自社が注力すべき業務を明確にし、人件費のかけどころをよく検討することが重要です。
効率化推進
経理業務は複雑で関連する法律も頻繁に変遷することから、対応方法を調べる時間コストも膨大になります。
自社対応の場合、知らないことは自分で調べなければいけませんが、経理代行サービスの場合は、業務を行うのは外部の経理知識や経験が豊富な人員なので、すべて丸投げができます。
調べ物は不要になり、業務は効率化され、時間的コストは削減できます。
実際に作業をしている時間だけでなく、作業前に費やす時間や労力も考慮し、経理代行サービスの利用を決めましょう。
経理代行サービスの選び方
経理代行サービスは多様な類型があるので、自社に適したサービスを選択します。
会計士・税理士などの専門家がいるか
経理代行サービス会社は会計士、税理士などの専門家が在籍している方が望ましいでしょう。
経理業務は専門的な作業を期日までに正確に納める必要があります。
このため、経験豊富で専門性の高い代行会社である方がスムーズに対応してくれるのです。
スピードや柔軟性
経理業務では突発的な対応を依頼するケースもあります。
これに応じられない会社では仕事に穴が空いてしまいます。
経理代行サービス会社の選定では、対応スピードと柔軟性の確認が必要です。
スプレッドシートなどで進捗状況を共有し、コミュニケーションを効率化しつつ、相互確認できる体制の構築で不安を解消していきます。
業務範囲
経理業務を大別すると、現金預金を取り扱う業務として、請求業務、回収管理、振込業務、小口管理があり、給与にまつわる業務として、給与計算、労務管理があります。
また、記帳業務として、会計仕訳入力、試算表・決算書作成業務があり、税務関連業務として、税務申告業務、税理士とのやり取りが、そして、管理資料のとりまとめとして、資金繰り表、業績管理資料等作成があります。
これら業務の多くが外部委託可能ですが、経理代行サービス会社にも対応範囲や強みがあるので、その確認が欠かせません。
費用
価格だけで業者を選択してはいけません。
大切な経理業務を任せるので、なによりも信頼感は欠かせませんし、各種条件を満たしていなければ、本来の目的を達成できなくなります。
経理代行サービスの真の狙いは「経理関連の雑務を切り離し、社員に高いパフォーマンスを発揮させること」です。
コストが優先されるあまり、この真の狙いが達成できなければ外注化の価値は半減します。
また、例え高額であってもスポットで難易度が高い業務を任せることができる代行業者がいれば、いざというときに便利です。
外注先のストックを用意しておくと経営の自由度が高まります。
日本人が担当しているか
経理代行サービスは品質の担保が大前提ですが、中には経費削減のために業務を新興国などの人件費が安い国にアウトソースしている場合があります。
日本語が通じず、日本の税制にも通じていない人が担当する業務は、品質が伴わないことも多いでしょう。
料金が安いに越したことはありませんが、クオリティとのバランスが重要です。
情報管理の徹底
経理情報は秘匿性の高い、極めて重要な情報なので、これを社外に出すことは本来慎重であるべきです。
だからこそ、内部情報や顧客情報が漏洩することがないような管理を徹底している信頼できる業者を選定しましょう。
当然、守秘義務契約は締結し、給与計算などの個人情報に関する業務委託は、プライバシーマークやISO27001などの情報保護に関する登録商標の取得状況も確認すべきです。